ハーバード大学准教授クリスティン・ファッブらが、ペシュメルガがイラクの今後の政治のカギを握っている、と8月25日付のフォーリン・アフェアーズ誌で述べています。論説の要旨は以下の通りです。
7月のモスルの奪還で、イラクは再び十字路に立たされている。モスル解放にはイラク政府軍、民兵組織、そしてペシュメルガ(イラク北部クルド自治政府、クルディスタンの治安部隊)が貢献した。ペシュメルガがISとの戦いに勝利したことにより、クルド自治政府が支配する領土は2014年以来約4割増えた。クルド人はイラクの領土統一に挑戦する地位を高めた。
法的にはクルド自治政府はイラク中央政府の連邦の一部である。しかし9月25日にはクルド自治政府地域の独立の是非を問う住民投票が行われる。クルド人の大半は独立を望んでいる中で、ペシュメルガがIS後の地域の体制をどう見ているかは、イラクの今後の政治のカギを握る。
我々論説の筆者は、「平和、人間の安全保障センター」と協力して研究チームを作り、この夏ペシュメルガの兵士2,339人の聞き取り調査を行った。クルド自治政府地域ではクルド民主党とクルディスタン愛国同盟が争っているが、兵士たちはいずれかのグループに忠誠を誓っているわけではなく、クルディスタンのために戦っているという愛国主義が原動力であることが分かった。
かつてISを支持したスンニ派アラブ人にどう対処するかが、IS後の地域の安定にとって重要だが、調査によれば、ペシュメルガの兵士の大部分は、これらスンニ派アラブ人に遺恨は抱いていないとのことである。シーア派の民兵組織がペシュメルガと同じようにこれらスンニ派アラブ人に対処することが、地域の安定にとって重要な第一歩である。
出典:Matthew Franklin Cancian & Kristin Fabbe ‘What Iraq's Kurdish Peshmerga Believe’ (Foreign Affairs, August 25, 2017)
www.foreignaffairs.com/articles/middle-east/2017-08-25/what-iraqs-kurdish-peshmerga-believe