2024年7月15日(月)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2010年9月30日

中国レアアース大国の寿命は縮まった?

 もうひとつ事件のマイナス影響として、先週来、大きく伝えられたのが、ハイブリッドカーなどに用いられる、希土類(レアアース)の実質、輸出停止措置であった。中国政府は、「輸出停止を指示せず」としていたが、日本では中国側の「報復か」と伝えられた。

 数日後の9月29日になると一転、両国の関係筋から「輸出停止が解かれた」との情報がもたらされる。これは、中国「漁船」の船長を日本側が無条件釈放したがために、中国側の軟化の現れのひとつのように日本では伝えられた。

 しかし、一部中国産レアアースを原料使用するメーカーの経営者はいう。「相当長期化したら深刻だったかもしれませんが、それ(長期化させること)は中国側も不可能だったでしょう。逆に今回のことはいい結果をもたらしてくれた気がしています」。

 多くのメディアがすでに伝えているように、現在レアアースの産出量では中国が世界シェアの9割以上を握っている。これは、最大の産地である内モンゴルの鉱山で、鉱脈が非常に浅いところにあり、採掘後の処理コストの安さに優位性があったためだ。

 レアアース自体はもともとアメリカやオーストラリアなどでも産出されていたが、中国産の圧倒的な価格優位に敗れ、閉山に追い込まれた。9割以上のシェアを握った中国は、昨年から日本をはじめとする各国に対して、「レアアースの輸出制限」をチラつかせ、価格のつり上げをはかってきたのだ。

 「向こう2年は、値上がり一方の状況かと悲観的になっていました。しかし、今回のことでそれはなくなった」と、前述のメーカー経営者はいう。

 世界ではレアアースの埋蔵地が何カ所も確認されており、それらの開業が2年後目途なのだ。つまり、これが中国の一人天下の期限であり、そのために中国は自国にあるにもかかわらず、世界のレアアース鉱山の権利獲得に躍起になってきたのである。

 仮に尖閣の事件で日本が早々に折れなかったら、中国は、レアアースの輸出停止を最大2年後まで続けたのか? 答えは断じてノーだと関係者はいう。「そんなことをしたら、中国側のレアアース生産関係の業者のほうが干上がってしまったはず」。

自らリスクを露わに 孤立した中国

 日本のレアアース輸入業者らは、まずは「輸出が滞っている」ことの経緯を調べるためもあって各所に問い合わせをしたのだが、この情報に日本政府が過剰反応したと見る向きもある。

 一方、中国はこのことで自らのリスクを世界に喧伝してしまった。経済活動を政治問題の人質とするかのような手法は、まさに世界が従来、中国に寄せて来た懸念を明確に肯定することとなった感さえある。

 そして、ちょっと手回しが良すぎる感がないではないが、数年前に閉山したアメリカのレアアース鉱山が今夏、資金調達の目途が立って再開準備に入ったとの情報もあり、2年後と見られていた中国産レアアース絶対優位の期限が早まる事態ともなってきた。

⇒次ページ 今回の事件で最も得した国はどこ?


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