2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年10月20日

 イグネイシャスは、トランプの国連演説の最大の驚きはそれが非常に通常のものだったことだ、新生トランプを打ち出そうとしたものだと論評しています。その限度において恐らく前向きに評価しているように思われますが、確信はしていないようです。トランプにやってみせて欲しいと言います。

 これまでトランプはグローバルな協力や多国間の協力、国連などに対し極めて否定的な態度を取って来ました。40分に亘る9月19日の国連演説は、随所にトランプ節(主権の強調等)はありますが、イグネイシャスの言うように「通常のもの」になっています。世界での米国の役割や国際社会の介入などを否定してもいません。習近平やプーチンの演説かと思われるような段落もあります。数か月前には国連総会を欠席しても驚かないようにさえ思えましたが、国連の重要性の強調等は様変わりです。演説の中の世界観もこれまで思われたほど極端ではありません。世界の現実から来る必要性がそうさせているのでしょうか(北朝鮮問題などでは安保理抜きには考えられません)、学習の結果なのでしょうか、側近の影響なのでしょうか。

 北朝鮮の部分は、驚くほど強硬です。言葉は信頼できるように使うことが重要ですが、北朝鮮はそのメッセージを間違わないできちっと理解すべきです。なお日本人の拉致にも言及しています。また安保理等での中国、ロシアの協力に言及し、感謝すると述べています。トランプ流です。

 その他気づきの点を挙げれば次の通りです。

(1)戦後70年の世界秩序を議論しそれを総体的に肯定しています。今までのトランプの言動からすると大きな違いです。

(2)世界の主権国家が相互尊重を基礎に協力することが重要だと述べています。中国のような言いぶりです。調和と友好が大事だとも述べ、「米国は共通の目的、利益、価値に基づく原則を持ったリアリズムの政策を取っている」と述べています。

(3)主権に対する脅威の問題として、ウクライナや南シナ海に言及しています。

(4)アフガニスタン政策にも言及し、今後は政治家による恣意的な日程などは設けないとしています。オバマ批判です。

(5)イラン核合意に係る不満やイランへの不信は変わっていません。トランプの危ういところです。19日に演説したマクロン仏大統領は、イラン核合意は「平和にとり不可欠だ」とトランプに異論を唱えています。なお今年の総会にメルケル、習近平、プーチンなど主要首脳が欠けていることが気になります。

(6)シリア難民との関連で、ヨルダン、トルコ、レバノンに言及し、その役割を感謝するとしています。

(7)米国の国連分担金は22%以上で不公正な負担をしていると述べています。

(8)貿易については大型の貿易取決めや紛争処理などが最善の方法だと言われてきたが、米国では多くの雇用が失われてきたと述べています。

  
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