Brexit交渉に苛立つボリス・ジョンソンの言動が物議を醸していますが、英フィナンシャル・タイムズ紙コラムニストのジャナン・ガネッシュが、10月2日付の同紙で、彼の動機を分析した一文を書いています。論旨は以下の通りです。
EUをどう離脱するかについて保守党として決定出来ていないことを覆い隠すために、メイ首相は国内政策に関心を持たせるよう演じなければならない。強硬なBrexitを緩和させて話さなければならない。外相のボリス・ジョンソンが裏切りだといい立てる時、メイは彼を罷免するか、それとも自身に残された信頼性を失うかしかない。両者の冷たい関係はこれまで保守党が避けて来た議論そのものである。どういう種類の離脱か、どういうスケジュールで離脱するかといった点である。完全な離脱の実現にジョンソンが焦るのは間違いであるが、遅延は残留派の思うつぼになるとする彼の感覚は正しい。メイの計画では、加盟と非加盟の間に入ってしまい、最終的に離脱するチャンスが低くなる。基本的には離脱でも、時間がかかると、その間に進路を変える事が生じ得る。
例えば、不況、既に進行中のEUからの移民数の減少、離脱条件に関する議会での議決がある。加えて、欧州司法裁判所、清算金、段階的離脱についての更なる譲歩もあり得る。小さな譲歩の積み重ねはジョンソンの大きな恐怖である。
ジョンソンは離脱後の英国の姿については何も語るものがない。しかし、離脱を達成するための戦術に関しては中身がある。それは移行期間の深みと長さを制限する4つのレッドラインである。離脱は速やかに果たす必要があり、さもないと離脱は起きないと彼は直観する。つまり、国民投票を破棄する首相はいないだろうが、移行期間が2年以上にわたれば、誰もBrexitを語らなくなることを彼は知っている。移行期間を主張する者は、その終了時点で離脱の原則を再検討する用意があるといわんばかりである。移行期間が将来にわたって永続する暫定的取決めと化し、EUへの復帰のルートにさえなりかねない。経済的混乱のリスクを取って早期に離脱するか、それとも離脱しないリスクをとって時間をかけて離脱するか。ジョンソンはその選択をしたわけである。
しかし、下り坂にある国にとっては、得るものが僅かでも重要である。EUから全く出てしまうよりは半分入っていた方がましである。ジョンソンは移行期間をあるがままに見られると思う。それは首相として破綻した立場にありながら国のため何かを救いたいと必死の女性の最後の公的職務であり、彼女のマゾヒスト的苦悩なのである。
出典:Janan Ganesh ‘Boris Johnson’s impatience over Brexit masks a fear of delay’ (Financial Times, October 2, 2017)
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