2024年4月24日(水)

ネット炎上のかけらを拾いに

2017年11月18日

 これは男子大学生ブロガーが、妻の出産費用を募ろうという試みだ。子どもは来年4月に生まれてくるものの、彼らには「経済体力」がない。そのため、クラウドファンディングを企画したという。

 実はこのクラウドファンディングは「下書き」(https://camp-fire.jp/projects/view/48942?token=1qmp2b9n)の状態で公開されている。開始前の「下書き」の状態で公開し、意見を募っていた時点で「炎上」。その後、サイト側の審査に時間がかかり、まだ公開に至っていないようだ。金額は当初50万円を予定、その後30万円に引き下げられたらしい。

イージーモードの出産・子育てに憧れるものの

 ネット上での批判の声を拾ってみると、「出産に関して舐めくさってる」「(妻のインスタグラムを見ると)生活が困窮しているようには見えない」「言ってることぺらぺら」など散々だ。また、「下書き」で説明されている、“妊娠が判明したことで学生結婚”“男子大学生は4年生だがまだ単位が多く残っていてアルバイトがあまりできない”“妻にカードローンがある”などの事実も、ネットユーザーから冷たい目で見られる原因のようだ。

 筆者も、「妊娠が判明し、僕はそれまでやっていたことの多くをやめました。毎月のように買っていた服も、大好きなゲームもやめました」というくだりを読んだ際には、片方のまぶたの下あたりがひくひくした。そこでドヤられましても。いや、ドヤっているつもりはないかもしれないのだが、この振る舞い方の下手さは致命的ではないか。

 言っておきたいのだが、筆者は「出産クラウドファンディング」という考え方に100%反対するわけではない。むしろ、こうやって人に頼ろうとする姿勢は必要だとも思う。妊娠した女性が男性に捨てられ、一人で悩み、孤独な出産をし、子どもを死なせてしまうケースも残念ながら日本では今もある。そのようなケースに比べれば、どう考えてもこちらの方がいい。

 さらに言うのであれば、どれだけ怠惰で浪費家な学生カップルであっても、子どもを育てられる世の中であってほしいとも思う。コンドームを使っていても避妊率は100%ではない。人間が100%コントロールできないものだからこそ、思いがけない出産を暖かく迎える社会であってほしい。子どもを育てるのには若くてはダメ、年とってもダメ、学生ではダメ、職がなくてはダメ、覚悟がなくてはダメ、自己犠牲しなければダメ、ひとり親ではダメ、未婚ではダメ、保育園が見つからなかったら自己責任、産後うつは甘え、ワンオペは当たり前、子育てはとにかくつらく厳しく忍耐が必要なものだとハードルを上げ続けた結果の少子化。イージーモードの出産・子育てがあるならば、喉から手が出るほど欲しい。

 だから、どちらかといえばこの大学生ブロガーにはクラウドファンディングを達成させてもらいたいのだが、残念なことに彼を叩く人の気持ちも痛いほどわかる。


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