2024年12月22日(日)

ネット炎上のかけらを拾いに

2017年7月11日

 「電通の計算」である可能性が指摘されると風向きが変わった。

iStock/tomorca

広告代理店がこれまでの炎上を知らないわけがない

「肉汁いっぱい出ました」
「暑くないと? もぉ元気良すぎやん!」
「お酒飲みながらしゃぶるのがうみゃあで」
「コックゥ~ん! しちゃった(ハートマーク)」

 サントリーのweb動画広告が炎上している。こういった炎上と広告取り下げが起こるたびに、「下品な想像をする方が下品だ!」「AVを想像する? 私は全くそんなことは思わなかったが?」など、自分の精神の潔癖さを主張することで異議を申し立てる側を非難する声が聞かれる。

 単刀直入に言って、広告代理店はこうやってCMを擁護しようとする人をバカだと思っていると思う。1つ目の理由はCMを制作したクリエイターの意図を読み取っていないからである。人気グラビアアイドルが蒸気した表情で春巻きや焼きトウモロコシを頬張り、方言を交えながら「一週間前に振られてまって」「座ってもいいですか?」「2人っきりになっちゃいましたね」「えー、一流企業?」「食べようで食べようでおいしかけん」など、まるでこちらに好意があるかのようなセリフを口にする。冒頭に列挙したセリフが何をイメージさせようとしているのか、読み取れる方が大人であり、制作者の意図をわかっている。

 以前もこの連載で取り上げたが、広瀬すずがカップ焼きそばにマヨネーズをかけながら「全部、出たと?」と言うCMはセリフが差し替えられた。松下奈緒がビールのCMで「リッチしよう」と言うセリフも、「エッチしよう」に聞こえることから差し替えとなった。天下の広告代理店様がこういう事例を知らないわけがないのである。

 バズフィードの記事によれば、この広告を担当したのは電通。制作担当者を知る同社の社員は、「炎上やむなし」という判断があったらしいことを語っている。この証言の信用度はわからないが、これまでの数々の炎上例から考えて、代理店が心の底から「これなら問題ない」と思っていたわけがない。

 ここでハフィントンポストがこの件について取材した大妻女子大学の田中東子准教授(ジェンダー論)のコメントを引用しよう。田中准教授は今回の炎上は以前のユニ・チャームのオムツCM炎上とは違い、露骨さが感じられたと指摘している。

 「今回の動画は、最近の「炎上による広告取り下げ」が多発している現状に対して"挑戦"したいのかと疑うほど、悪意を感じられるものでした」

 この商品のテレビ版CMは、唐沢寿明、板谷由夏が夫婦を演じる内容で、性的な要素や男性にターゲットを絞った印象はない。web動画の視聴数を上げるために、あえて炎上を狙ったのだとすれば、その点でも「下品な想像をする方が下品」という擁護は筋違いだ。


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