2024年12月22日(日)

使えない上司・使えない部下

2017年12月26日

 メガバンクが、大規模なリストラ案を打ち出した。発表された数字を合計すると、3万人を超える規模の労働力削減が行われる。

 今回は、人事コンサルタントであり、明治大学大学院グローバル・ビジネス研究科の客員教授である林明文氏に取材をした。林さんはデロイトトーマツコンサルティングで人事コンサルタントとなり、その後、大手再就職支援会社の社長に就任。2002年からは、人事コンサルティング会社・トランストラクチャの代表取締役を務める。著書に『経営力を鍛える人事のデータ分析30』(中央経済社)などがある。

 30年以上の実績がある人事コンサルタントには、メガバンクのリストラがどのように映ったのだろうか。

(Gazometr/iStock)

Q メディアでは、「AI(人工知能)リストラ」と言われていますね。私は、違和感を覚えました。実はもっと大きな理由があるように思いますが、いかがでしょうか?
 

 AIの影響もあるとは思いますが、人事部にとってもっと根深いのは、膨張するバブル世代の人件費です。大手銀行もいよいよ、その扱いに困り、人員整理に踏み込んだとみるのが妥当でしょう。この世代をターゲットにしたリストラは10年以上前から、大企業では行われてきました。

 バブル世代は、1986年から1991年にかけて大量に新規採用された世代です。すでに80年代後半には、「いずれ、この世代の扱いに困ることになる」と指摘されてきました。それが放置されたまま、ズルズルと来たのです。

 本来は、バブル世代は20代の頃から人員削減をするべきでした。ところが、その時期(1990年代)は不況が長引いていましたから、新卒採用を控えることで人件費を抑え込んできたのです。2005年前後から、40代になったバブル世代のリストラが始まりました。

 今回のメガバンクのリストラはその数が多いから、マスコミが一斉に報じました。実際は、バブル世代のリストラは10年以上前から静かなブームです。2020年の東京五輪以降、景気が大きく後退するでしょうから、この世代を狙ったリストラは勢いを増します。2030年までくらいは、「リストラバブル」として止まらないはずです。1991年のバブル経済不況以降、その数などは最も多いものになるでしょう。

 メガバンクのリストラは、その幕開けです。それにしても、バブル世代のリストラのタイミングは極端に遅い。50代になるまで待つ必要があったのだろうか、と思います。もはや、バブル世代はゆでガエルですよ。

Q 大企業がリストラをするとき、退職金に割増金をつけることがあります。額が5000万円~8000万円になるケースもあります。あの額は、極端に高すぎるのではないでしょうか?

 その思いはわからないでもないのですが、仕方がない面もあるのです。大企業に現在50歳で、年収1000万円の社員がいるとします。60歳定年まで働くと、会社は少なくとも1億円を払わないといけない。退職金を払うと、1億数千万円を超えます。今は65歳定年が増えていますから、さらに支払う額が増えるかもしれません。

 50歳のとき、仮に退職金2000万円に割増金を5000万円にして、計7000万円で辞めてもらえるならば、ざっと5000万円以上の人件費を削減することができるのです。これが数十人~数百人になると、相当な額の人件費を減らすことができます。ここまで考えるならば、大企業の人事部は「1人につき、5000万円を上乗せすることは高くない」と思うでしょう。


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