補講 北朝鮮入門

2017年12月28日

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澤田克己 (さわだ・かつみ)

毎日新聞記者、元ソウル支局長

1967年埼玉県生まれ。慶応義塾大法学部卒、91年毎日新聞入社。99~04年ソウル、05~09年ジュネーブに勤務し、11~15年ソウル支局。15~18年論説委員(朝鮮半島担当)。18年4月から外信部長。著書に『「脱日」する韓国』(06年、ユビキタスタジオ)、『韓国「反日」の真相』(15年、文春新書、アジア・太平洋賞特別賞)、『韓国新大統領 文在寅とは何者か』(17年、祥伝社)、『新版 北朝鮮入門』(17年、東洋経済新報社、礒﨑敦仁慶応義塾大准教授との共著)など。訳書に『天国の国境を越える』(13年、東洋経済新報社)。

 米国は2017年11月、北朝鮮の船が海上で別のタンカーに横付けし、積み荷を移し替えている様子をとらえた衛星写真を公開した。東シナ海などの公海上で石油精製品などを密輸していると考えられている。こうした密輸で国内需要をすべてまかなえるかは疑問だが、需要が少ないから1回でも密輸に成功すれば一息付けるのかもしれない。しかも洋上でのこうした密輸を発見するのは、それほど簡単なことではないのである。

 北朝鮮は制裁強化を想定して備蓄を増やしてきた。さらに一定程度は密輸でカバーできる可能性がある。北朝鮮政府は消費量を減らすための引き締め強化を図るだろうから、そうなると需要はさらに減少する。経済活動が低調になるという効果はすぐに出てくるかもしれないが、北朝鮮を追いつめるほどの効果となると時間がかかりそうだ。

石油はエネルギー供給の5.8%だけ

 さらにやっかいなのは、北朝鮮のエネルギー構造である。北朝鮮経済を専門とする三村光弘・環日本海経済研究所主任研究員は「1950年代に中東やアフリカに相次いで大油田が発見され、世界的にエネルギーの主役が石炭から石油へと移行した後も、北朝鮮は自国に豊富に存在する石炭を中心とするエネルギー体系を変えなかった」(『現代朝鮮経済』、2017年)と指摘する。

 同書には、2012年の北朝鮮の一次エネルギー供給源(推計)が掲載されている。自給できる石炭が78.3%、水力が8.2%、再生可能エネルギーが7.6%で、石油は5.8%にすぎない。再生可能エネルギーは太陽光だと思われるが、近年は中国での太陽光発電パネルの価格下落を受けてさらに普及が進んでいる。

 もちろんガソリンやジェット燃料がなければ、北朝鮮軍の戦車や戦闘機を動かすことができないし、ミサイルにしても移動式発射台車両を動かすにはガソリンが必要だ。民間部門でも、車両の運行などにガソリンは必須である。しかも北朝鮮は石油を輸入に頼るしかないから、石油関連の制裁は北朝鮮に大きな打撃を与えうるものだ。ただ、その効果の大きさや即効性は、日本に住む私たちが想像するのとは違う可能性がありそうだ。
 

  
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