このビジネスで成功した段はBBKを創設。ビデオCDプレイヤーや学習機器をヒットさせ、同社を成長させていく。筆者も1990年代に中国留学した際にはBBKの「複読機」のお世話になった。複読機とは語学学習用のカセットテープ・プレーヤーなのだが、数秒間の音声をメモリに記録することができる。テープを巻き戻さなくとも、同じフレーズを聴き直せるという優れ物だ。テープレコーダーにメモリをくっつけただけのガジェットで、技術的にはたいした製品ではなかったかもしれないが、当時のニーズにはぴったりだった。90年代の中国では外国語は「稼げる能力」の筆頭格で、正しい発音を習得しようと悪戦苦闘する若者がごろごろいた。技術はなくとも、ニーズを探し当てたイノベーションだ。
外資の下請け工場として製造業が勃興し、怪しげな模倣品を作りだし、低技術でもニーズにあった製品で成長し、資金力と技術力を備えた大企業に成長していく……。BBKの歩みは日本電機産業を飲み込んだ中国の縮図だ。
OPPOは2004年にBBKから独立する。音楽プレイヤー、動画プレイヤーからスタートし、2008年に携帯電話事業に参入。徐々に存在感を高めていく。同社が世界的な注目を集めるようになったのは2015年からだろう。同年、サッカークラブ「FCバルセロナ」とのパートナー契約が話題となり、翌2016年には「R9」「R9S」をヒットさせた。前年比130%増の9940万台という出荷台数を記録、世界4位へと躍進を遂げている。2017年も成長を続け、出荷台数1億1180万台と大台を突破している。
気軽にいい写真が撮れる「カメラフォン」
OPPOはいかにして成功したのか。「路面店の大量展開」という販売チャネル、「街頭広告・テレビCMの大量出稿」という宣伝戦略、そして「カメラと急速充電」という性能面があげられる。
ユーザーにとって興味があるのは性能面だろう。2016年には「R9」「R9s」が爆発的なヒットを記録し「国民携帯」の異名を取ったが、「5分の充電で2時間通話」という急速充電、そして「自撮りやスナップ写真に特化したカメラ性能」が訴求要因となった。
昨年、筆者はベトナム・ハノイを訪れたが、あるベトナム人iPhoneユーザーの言葉が印象的だった。「OPPOなんてダメダメ。カメラが良いだけだもの」というもの。ハノイではiPhone人気が高く、少々無理して購入している人も多いというが、その彼らにしてもOPPOのカメラ性能の高さは認めていたわけだ。
2月9日に日本で発売されるR11sはR9の後継機だ。1月31日に開催された発表会で実機を触ったが、確かにカメラにはうならされた。メインカメラは2000万画素と1600万画素のデュアルカメラだ。デュアルカメラを採用する機種は今では珍しくないが、広角と望遠、あるいは色情報用カメラと明度情報用カメラという組み合わせだ。R11sは周囲の状況にあわせて暗所に強い2000万画素カメラと明るい場所できれいに撮れる1600万画素カメラを自動的に使い分けるという斬新な手法を採用している。ユーザーは意識せずとも、明るさにかかわらずハイクオリティな写真が撮れる。
「意識せずとも」という部分がOPPOの特徴だ。発表会後の記者会見で、OPPO Japan代表取締役の鄧宇辰氏は「他社スマートフォンのカメラもハイクオリティだが、我々のカメラは気軽に撮れる。それが若い人、一般大衆にとっては重要なことだ」と説明している。
ビューティーモードなど補正機能も充実しているが設定項目は少なく、簡単にいい写真が撮れることへのこだわりが見えた。