世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年2月21日

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 イランによる提案としては良くわかります。中東は本格的な地域協力の枠組みを欠く特異な地域であり、理想論として地域協力の枠組みがあることは望ましいです。しかし、アラブとイラン、トルコの間、最近ではアラブ間でも、根深い溝があり、それを跨ぐ協力はなかなか難しいです。とりわけアラブとペルシャの不信は根深いです。

 イランの穏健派であるザリフが、今回、このような寄稿をする背景には、①シリア情勢が一山超えた自信、②トランプ政権のイラン核合意に対する強硬な立場の継続、③サウジとの緊張とカタールのイラン接近、④向こう数か月は欧州が主導せざるを得ない核合意問題などがあります。対イラン強硬ムードの復活とイラン外交の閉塞感に新たな展開を開きたいとの考えがあるのでしょう。記事冒頭の無実な記述からイランの現状認識が窺われます。

 この記事でザリフは、利益こそ協力の不可欠の要素であり、共通する利益を作っていくことこそ重要である、また、イランこそが、その国力や政策により大国である、と述べています。

 中東の将来を考える場合、米等域外国の関与が不可欠だとの考え方と、域内大国間の主導による地域運営が望ましいとの二つの考え方があり得ます。ザリフは明確に域外国を排除した地域秩序を想定しています。しかし、そのような枠組みは直ちに空中分解することでしょう。ザリフも域外諸国の排除を言いながら、欧州などによる説得を求めています。域外国なしに中東を語ることは出来ません。

 イランによるこのような提案や域内国との対話の積み重ねは歓迎すべきことです。しかし同時に、イランが、次に示すような、実際の行動により関係国の懸念を払しょくしていくことが重要です。

 (1)拡張的、内政干渉的な外交政策を変えることです。レバノンのヒズボラやガザのハマス等過激派への支援を止めます。今やバグダッド、ダマスカス、ベイルート回廊が出来上がろうとしているように、イランの勢力の漸進的拡大は地域の不信要因になっています。民主的統制外にある革命防衛隊の活動も問題です。また、宗教的、社会的な内政干渉活動も指摘されており、イランは懸念を解消する必要があります。

 (2)イスラエルの生存権を認めることです。今の中東でこれを認めていないのはイランだけです。

 (3)軍備拡張や核開発に関する政策やレトリックを修正することです。

 (4)イスラム保守派の戦闘性を抑制します。サウジなど王制国家には脅威になっています。

 イランと日欧など域外国との対話も重要です。従来、日本とは緊密な関係を保ってきました。対話によりイランを国際社会に包含できますし、国際社会の標準的な世界観を伝えることも出来ます。イランも脅威を感じていることがあるでしょうし、孤立の恐怖もあるでしょう。域外国との対話はイランの抑制、変化に貢献します。

  
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