工藤氏の考えに基づき、新宿区は独自のプランを作成した。特徴的な設備として挙げられるのは、「プロジェクタ」と「ホワイトボード」の組合せと、教員の手元をスクリーンに映し出せる「実物投影機」だ。
「プロジェクタ」と「ホワイトボード」を組み合わせることで、教員はプロジェクタが映し出す画像の上に、マーカーで自由に書き込むことができる。工藤氏は「映像とこれまでの板書がシームレスにつながることで、教師の使い勝手が飛躍的に向上する」と考えた。また、実物投影機があれば、教科書を拡大して説明したり、技術の授業で作業をする手元を映したりすることもできる。
授業のたびに時間をかけて準備をするようでは教員の負担になるだけなので、外部企業の協力を得て、すべての配線がセットアップされたまま格納できる「IT教卓」も開発。「現場の負荷を考えずに機器を導入しても、いずれ使われなくなって埃まみれになるだけだ」という工藤氏の強い意志を反映したシステムだった。
試験的にこの設備を使ったベテラン教員からは、「もう以前の環境には戻れない」という高評価を得たという。
こうして、学校情報化担当チームは新宿区独自のICT化政策を立ち上げる。3年間で新宿区立小中学校全40校、総教室数700を超えるすべてにIT教卓を導入し、すべての黒板をホワイトボードに変え、超短焦点プロジェクタを常設するという、前例のない規模の計画だった。