2024年11月25日(月)

家電口論

2018年4月6日

オーディオマニアには、モノたらない

 カセットの規格は1963年とすごく古いです。長く使われる間にもいろいろな技術革新が行われています。一つは素材。アナログ記録の場合は、デジタルのように「0」「1」ではなく、信号がそのまま記録されます。この信号の正確さが命です。しかし、信号は記録でも、再生でもロスが発生します。そんな中で正確な信号を取り出すためには、出力が高い素材(磁性体)を使います。

 ちょっとでもカセットをいじった人ならご存じだと思いますが、カセットには、「ノーマル」「ハイ」「メタル」の3ポジションがあります。「ノーマル」が出力が低く、「メタル」が一番高いです。名前は大まかに、使われている素材を表します。もともと「ハイ」は、「フェリクロム」と呼ばれていましたが、六価クロム公害の風評被害などでフェリクロムの代わりに、コバルト酸化鉄系の磁性体が使われ、名前も「ハイ」になっています。

 そう、このポジションはカセットの歴史でもあるのです。できた時のカセットはポジションなどありません。この時代は、実用として「カセット」。よりよい音が必要なら「オープンリール」でした。しかし技術は進化します。次に新しい磁性体ができた時、今までより全然イイ音です。しかし出力が違い過ぎて、今までのシステムだと「書き込めません」。ヘッドの磁場が、磁性体の中の磁性を動かすことができなかったからです。そのために作ったのが「ポジション」。カセットの検出孔で、どのポジションのカセットか感知します。

 もう一つ知っておいて頂きたいのが、ノイズ処理です。アナログにはノイズが付きものですが、常にヘッドとコンタクトしているカセットはノイズが大きいです。このためノイズを電気的に抑える回路、ノイズリダクション・システムを入れます。有名なのは「ドルビー」でB、C、スーパーなどがあります。ちなみにオーレックスの語源は、当時東芝が開発した"adres"(Automatic Dynamic Range Expantion System)から来ているそうで、東芝も当時はノイズリダクション・システムを扱っていたわけです。ノイズリダクションをかけて録音したカセットは、同じ処理をして再生してやらないと、再生信号が元通りになりません。

 さて、TY-AK1です。生カセットテープがふんだんにある時代とは違いますので、ラジカセと言えども、再生が主です。そのためか、当モデルの録音はノーマルポジションしかできません。また再生は、ノーマル、ハイはそれぞれ独立したポジション搭載され、メタルはハイポジションで再生となります。

 ポジションはまだいいのですが、イタいなぁと思ったのは、ノイズキャンセリング系の回路が搭載されていないことです。これは「今、再現するとなると技術的に難しい」という説明がありましたが、ノイズリダクションシステムに対するサポートがないのは、ちょっと寂しさを覚えました。

 全体としてはリーズナブルによくまとまっている製品ですが、マニアにはちょっとモノ足らない感じです。

SONY 最強のカセット用ウォークマン WM-DD9の側面。上から、「ドルビー」「イコライザー」「ポジション」。これほどとは言わないが、もう少し頑張って欲しかった(著者私物)

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