なぜ、オーディオを事業としてやるのか?
しかし、東芝ライフスタイル社が中国の参加になった今、全盛期のシリコン、ネットオーディオでなく、ラジカセという道を選んだのでしょうか? その答えは販売店サイドにありました。
量販店で買うことが多くなったとは言え、地方に行くと「町の電気屋」がまだまだあります。東芝も家庭電化製品取次・特約店(電器店)、「東芝ストア」が、今でも全国に約3000店あるそうです。 特長は高齢者のお客様が多いことです。実際、電球一つでも配達。お客様の状況によっては、取り替え、古いモノを回収するなします。代わりに、テレビ、冷蔵庫、エアコンなどの買い換えの時は、指名をもらうわけです。そんな店には、いろいろな相談ごとが持ち込まれます。使いやすいオーディオ製品の要望がかなり多く、商品化に踏み切ったそうです。
実際、町の電気屋は、特殊なモノを置くというのではなく、何でも置いてあることが重要で、東芝がオーディオ事業を止めたからと許してはもらえません。このため一時期、同じグループ内だったオンキョーの製品が東芝ストアには置かれたようです。しかし、オンキョーもパイオニアと一緒になり、今、ハイレゾの中核メーカーの一つ。ちょっと町の電気屋と違ってきています。
このため東芝は、生活家電に近い発想で、「ユーザーの日常生活にもっと身近で役立つ商品」を提供していくべく、あくまで「ポータブル」カテゴリに徹底的にこだわりった、「ポータブル音響専業メーカー」というポジションを狙い事業を行っているそうです。実際、ラジカセ分野では、トップシェアだとか。なかなかの着眼点です。
こうなるとブランド名、オーレックスを復活させたことも分かりますね。ユーザーが若い頃馴染みがあるからです。あと、今の若い人には、目垢の付かない通好みの新ブランドと認知してもらえるかもしれません。
しかし今後は、どうなのでしょうか? シニア層で上手く行ったとはいえ、ユーザーは増えるのでしょうか? ラジカセはある意味ブームなのは事実です。タワーレコードなども、壁面にインディーズの録音済カセットを販売しています。しかし限界はあるのではないでしょうか?
東芝が想定ユーザーあげているのは、小学生です。英語が義務化されるためです。2008年度に小学5、6年生を対象に英語活動の開始、2020年からの3年生から英語必修化、5年生から教科化など小学校において新学習指導要領が実施されるのを背景に、語学学習での活用を見込んでいるのです。
我々の世代もラジカセを買ってもらう時、「英語勉強に必要なんだよー!」と言った人は少なからずいたと思います。こんな時、便利なのはスマホ、PCですが、如何せん、ネットには誘惑が多いもの。勉強以外のことを考えて躊躇する親御さんも多いと思います。そんな時、安価なラジカセは便利です(実際は、カセット機能は不要ですが……)。
どうも、東芝はラジカセビジネスの残存者利益を独占しそうです。明確なマーケティング理論もあるし、製品もいいです。また、そのような潜在ニーズを持ってくるお店が付いているのがいいです。マニアにはちょっとモノ足らないのが残念ですが、お店も含めて東芝製品のファンのために頑張って欲しいです。
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ちょっとでもカセットをいじった人ならご存じだと思いますが、カセットには、「ノーマル」「ハイ」「クロム」「メタル」の4ポジションがあります。「ノーマル」が出力が低く、「メタル」が一番高いです。名前は大まかに、使われている素材を表します。内「クロム」は六価クロム公害の時、公害とは無関係だったのにも関わらず世間をはばかって、ほとんど製品として出回りませんでした。
同、3段目下、写真
同、4段目
オーレックスの語源は、当時東芝がドルビーCをターゲットに開発した"adres"(Automatic Dynamic Range Expantion System)から来ています。ノイズリダクションをかけて録音したカセットは、同じ処理をして再生してやらないと、再生信号が元通りになりません。
同、6段目
ポジションはまだいいのですが、イタいなぁと思ったのは、ノイズキャンセリング系の回路が搭載されていないことです。これはラインセンス等の問題だそうです。アメリカの会社はキツいですからね。搭載は厳しいとのことでした。が、オーレックスの語源ともなったノイズリダクションシステムに対するサポートがないのは、ちょっと寂しさを覚えました。
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