この連載でも繰り返し触れていることだが、今のインターネットで最も燃えやすいのはジェンダーに関する言及や、女性を「モノ」のように扱うような女性蔑視的な価値観だ。セリーヌちゃん、ロエベちゃん、ミュウミュウちゃん……。
モリカケ問題などなどでごたついている世の中に、ちょっとしたギャグをかまして和ませようと思ったのだろうか。炎上して人身御供にでもなろうと思ったのだろうか。
時代遅れの価値観へ、ツイッター民の「おもてなし」
ところが、この発言は、そこまで大きくバッシングを受けなかった。恐らく、U氏がもともとクリーンで品行方正なイメージで売っていたりすれば事情が違ったのだろうが、彼が「こういうちょっとズレた発言をしてしまう人」として界隈で有名だったことが功を奏した(?)ようだ。U氏は、2013年には「恋愛市場におけるCA(サイバーエージェント)女子社員の価値」を「分析」した記事が波紋を呼んだこともある。
炎上を繰り返す人にメリットがあるとすれば、次第に「またあいつか」「もう放っておこうぜ」の空気が生まれることである。まともに怒る方が時間の無駄だよね、と。今回もそのような空気が生まれ、そのまま立ち消えるかのように思われた。思われたのだが、なんと、立ち消えることなく昇華した。何が生まれたかというと、「#女の価値を決めるバッグ」である。
このハッシュタグでさまざまなバッグの画像をツイッター上にアップする女性が続出した。ブランドのバッグは皆無。「ダイオウグソクムシのリュック」や紙袋にヴィトンのロゴを描いた画像などが大量にリツイートされている。
参考:「#女の価値を決めるバッグ」が爆誕。 「バブル世代の遺跡」的な発言に、笑いで対抗。(4月11日/ハフィントンポスト)
https://www.huffingtonpost.jp/2018/04/10/ohgiri_a_23408194/
いまどきこんなこと言ってるヤツには怒る意味もない。そんな心意気を感じる。
バッグで女性の価値が決まると思っている人にとってみれば、ダイオウグソクムシのリュックを背負っている女性は論外なのだろう。しかし同時に、ダイオウグソクムシのリュックを背負っている女性にとっても、そんな野郎は願い下げなのである。それを「#女の価値を決めるバッグ」は示している。
異性を一方的に品定めできると思い込んでいる図太さはひとりで生きていくために必要かもしれないが、人に好かれるためには必要ない。要らぬ去勢を張っているようにしか見えない「セリーヌちゃん」「ミュウミュウちゃん」の呼称を使う価値観を、ツイッター民が丁重にもてなした一幕だった。
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