こうした状況を打開しようと、日本に国内外のブロックチェーン技術者を呼び込み、スタートアップ企業への投資活動を活発化させようと設立されたのがロングハッシュである。
同社の事業の柱は、メディア事業、データ事業、投資育成事業の3つだ。メディア事業では、世界各国のブロックチェーンや仮想通貨に関するニュースの配信のほか、世界の仮想通貨の取引価格の掲載、セミナーの開催などを行う。データ事業は、取引データ分析による可視化などを行うほか、マネーロンダリングの防止や異常取引の発見にも寄与できるよう取り組む。さらに投資育成事業は、起業のサポートや海外ブロックチェーン技術チームの日本への誘致などを目指すという。
4月下旬の設立発表会では、社長を務めるクリス・ダイ氏が「ブロックチェーンの実用化を目標に運営する。現在、フェイスブックやウーバーなどの大企業が莫大なデータを持ち、個人情報の安全性はそうした企業やウェブサービスの信頼性にゆだねられている。個人情報を本人がコントロールできない状況を変えるには、ブロックチェーンが欠かせない」と述べた。
また同社会長に就任した投資家の谷家衛氏は、「日本にとって一番大事なのは、海外の優秀な人たちに日本にきてもらうこと」と強調した。
設立発表会に合わせて開かれた交流会には技術者や学生など約100人が参加し、世の中での関心の高さを伺わせた。日本の政府関係者も駆けつけ、内閣府の副大臣が日本政府の取り組みなどを説明するとともに、ロングハッシュのような民間の積極的な取り組みを評価した。
日本国内のブロックチェーンのエンジニア数は200人程度とみられ、半数が外国人だとされる。エンジニアの数が多い国はアメリカやウクライナ、中国といった国々だが、イスラエル、香港、シンガポール、エストニアといった国や地域にも多いという。
ロングハッシュは、こうした海外で育ったエンジニアを日本の会社に紹介し、プロジェクトベースで可能な分野を見つけて、ビジネスに育てることを目指す点に特徴がある。こうした取り組みが刺激となって、これから日本でブロックチェーン技術の大きな進展が見込めるのか。今後も様々な企業の動きが注目されそうだ。
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