3月11日に発生した東日本大震災で生じた甚大な被害に対し、世界の多くの諸国が日本に対して追悼の意を表し、また厚い支援の手を差し伸べてくれている。昨年、領土問題などで関係が悪化した、ロシアや中国もその例に洩れず、様々な形で支援に乗り出してくれた。本稿では、東日本大震災に対して、ロシアがどのような動きを見せたのか、またこのことが今後の日ロ関係にどのような影響を及ぼしうるのかということを考えていきたい。
*本稿では3月11日~18日の一週間の動きに限定しているが、その後も多くの支援は続いている。
ロシアの国家レベルの支援
メドヴェージェフ大統領は、地震発生から3時間足らずで、自ら日本に対するお悔やみと今後の支援を表明し、ショイグ非常事態相に具体的な支援策を提出するよう指示した。また、大統領は同日のうちに菅首相あてに弔電も送り、日本に近い千島列島やサハリン州に対しても必要な措置を取るよう指示し、翌12日には、ツイッターで日本人に向け、ロシア語ならびに英語で「愛する人を失った全ての日本の皆様に哀悼の意を表する」「我々の隣国を支援するよう、政府に命じた」とメッセージを送った。
14日には、ラブロフ外相も在ロシア日本大使館を訪れ、強い哀悼の意を表して献花した。
非常事態省は大統領の命令を受け、異例の速さで災害支援用機材や医療設備、ならびに医師や心理学者を含む200人以上の捜索・救援チームを航空機6機で日本に送る準備を終え、日本政府の要請を待つ状態となった。
こうして、13日に日本政府の支援受け入れ同意を受けて、ロシア非常事態省は大型輸送機イリューシン76で、約50人の救助隊員(当面2週間の活動を予定)と救助用車両3台などを輸送した。日本に対してロシアがこのような形で支援を行うのは史上初だという。さらに、極東のハバロフスクからも25名の救助隊員を乗せた大型輸送ヘリコプターMi26が日本に向け出発し、ショイグ非常事態相はメドヴェージェフ大統領と電話で協議し、追加支援の用意がある旨を明らかにした。15日にはショイグ非常事態相が河野駐ロシア大使(当時)と会談し、ロシア救助隊が派遣命令を待っているため、受け入れ手続きを加速するよう要請し、それを受けて日本側は速やかに受け入れを表明した。
そして、16日には救助隊員ら計75人(原発処理支援のための国営原子力企業ロスアトムの専門家も含む)を乗せた航空機2機が日本に到着し、これでロシアからの支援隊は約160人となり、非常事態省によれば、「ロシア史上最大の外国への救助隊」の規模となった。また、同日、8600枚の毛布など、17トン以上の日本の要請に基づく人道支援物資を積んだ航空機がモスクワを発った(ただし、日本の受け入れ調整が手間取ったため、日本へは19日に到着した)。19日には同時にもう一台の航空機が到着し、同日届いた毛布は約1万7千枚となり、飲料水も届けられた。
また、国際放送を行うロシア国営ラジオ「ロシアの声」は12日に東日本大震災を受けて、海外在住者のメッセージを伝える特別放送を行うことを発表した。日本と海外の間の電話がつながりにくくなっていることに配慮した措置で、日本の家族や知人らと連絡を取るのが困難になっている人々を対象とし、日本語、英語、ロシア語で24時間対応する電話を開設して、安否や連絡事項など録音すると、日本語放送で伝えられるだけでなく(同ラジオの日本語番組は毎日21~23時に放送)、ヨーロッパやアジアの言語でインターネットでも配信される仕組みである。