2024年4月27日(土)

古希バックパッカー海外放浪記

2018年5月20日

他国民のために命を懸けて戦う傭兵とは

お祝い事の正装をした少年

 世界の歴史を振り返れば傭兵はいつの時代でも存在した。ローマ時代の後半になると、ローマ市民からなる正規軍団は有名無実となり、周辺属国出身の傭兵部隊によりローマ帝国の版図を守った。中世では当時貧しかったスイス人の傭兵部隊が活躍。今でもバチカン市国の法王庁はスイス人衛兵が警護している。

 帝政ロシアではコサック騎兵軍団が組織され、日露戦争でも大日本帝国陸軍を悩ませた。現在でもコサックの末裔はロシア軍特殊部隊“スペツナズ”の中核を担っている。

 フランス外人部隊も上位指揮官だけがフランス人で下士官以下外国人という近代傭兵組織である。外人部隊は途上国からの志願者が大半であるが、ソ連崩壊直後はロシア・ウクライナ・東欧出身者が激増した。

 豊かな国が国益のために、他国の貧しい若者を傭兵として自国の軍隊に組織するということが歴史の法則のようだ。残念であるがネパールの若者に究極の選択を課している根本原因である経済格差は容易に解消されそうもない。

国連平和維持軍は現代の傭兵部隊なのか

 世界平和遺産のダージリン・トイ・レール(ダージリン鉄道)の急坂に設けられたループの中に軍人慰霊碑が立っている。1947年のインド独立後に世界各地でなくなった兵士を祀る慰霊碑のようだ。見たところ、150人近くの氏名が刻まれていた。

 ダージリン鉄道の隣席のインド人観光客の男性によると、パキスタンとの国境紛争を除けば大半の犠牲者は国連軍に参加して戦った兵士である。ローカル紙にはしばしば地元出身兵士が国連平和維持活動で亡くなった追悼記事が掲載される。国連平和維持活動での待遇(給与)が高いのでインド兵は率先して志願する。現在海外展開しているインド兵は一万人以上という。

 ちなみに国連平和維持活動に従事している将兵の出身国は、2014年時点でインド、パキスタン、バングラデッシュが上位三ヶ国。エチオピア、ナイジェリア等アフリカ諸国に続きネパールが7番目である。途上国出身兵が太宗を占めている。

米国海兵隊は経済大国日本の傭兵なのであろうか

 ネパールの若者のことを考えていたら、ふとアメリカ軍の志願兵の若者を思い出した(2017年3月20日掲載の『アメリカの貧しい若者の犠牲の上に平和を享受している日本』ご参照)。

 一朝有事があれば自衛隊だけで日本の国土及び国益を守ることは不可能だ。しかし大半の日本人は、米国に基地を提供して「思いやり予算」という金銭まで提供しているのだから、アメリカ軍が日本を守ることは当然と考えていないだろうか。

 これは米国海兵隊の若者を暗に日本の傭兵とみなしている傲慢な浅慮であると憂慮する。

⇒第9回に続く

  
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以上 第9回


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