2024年11月22日(金)

田部康喜のTV読本

2018年6月13日

 暖が罠にはまったことを明らかにしたのは、獄中にあったラデル共和国の元大統領のファリア・真海(田中泯)である。ファリアからさまざまな語学と学問を暖は学び、ファリアが死ぬとその死体と入れ替わって布袋に入って、海中に投げ出され布袋を切り裂いて脱出に成功する。シンガポールのプライベートバンクでファリアの財産を引き継いで、日本に向かったのである。

実は困難を乗り越えていく希望の物語

 第8回(6月7日)に至って、暖(ディーン・フジオカ)は自らの手を汚さずに、自分を罠にかけたひとりである先輩の寺角(渋川清彦)を殺害する。犯行は、自称デザイナーの安堂完治(葉山奨之)といまでは大規模ディベロッパーの経営者にのし上がった、神楽(新井)の妻である留美(稲森いずみ)のふたりによってなされた。自分も投資する将来有望なデザイナーとして、留美に紹介し、男女の仲になるように仕組んだのは暖だった。

 警視庁刑事部長にまで昇格した入間公平(髙橋克典)が警察署長時代に、不倫相手だった留美(稲森)に生ませたのが実は、安堂(葉山)だった。暖が別荘として使っている屋敷で安堂は産み落とされた。しかし、公平は赤ん坊を箱に入れたまま、庭のマリア像の近くに埋めたのだった。それを掘り起こしたのは、別荘に空き巣に入りいまでは暖の執事を務めている土屋慈(三浦誠己)だった。

 警察に実際に暖の冤罪を通報した、南条幸男(大倉忠義)はいまや有名俳優となり、妻にすみれ(山本)を迎えて、ひとり娘の明日香がいる。南条が一時香港で俳優修業をしている時に、世話になっていた地元の有名俳優の家に、香港マフィアが窃盗に入るのに協力した。マフィアは俳優夫妻を殺害し、幼い娘を買春窟に売った。幸男の秘密を暖は、メディアなどに流して追い詰める。幸男のマネージャーとして暖が送り込んでいるのが、買春窟に売られた娘の江田愛梨(桜井ユキ)だった。

 幸男は首吊り自殺を図るが、愛梨(桜井)が死の寸前でロープをナイフで切り助ける。ひとり娘の明日香の身にかつての自分を重ね合わせたからである。

 見舞客を装って、幸男の病室に入った暖は注射器で薬品を注入して殺害しようとする。すみれが現れる。

 「どうしても殺したいなら、わたしがやる」
 「幸男が好きなのか」
 「暖にやらせたくないから」
 「だったら、お前がやれ」

 注射器を残して、暖は去る。

 原作のダンテスが復讐を果たして、ラストに放った言葉は、いまも好きな言葉である。物語が復讐譚(ふくしゅうたん)であるとともに、実は困難を乗り越えていく希望の物語なのである。
 

  
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