2024年4月27日(土)

田部康喜のTV読本

2018年5月23日

 NHKスペシャル「日本の諜報 スクープ 最高機密ファイル」(5月19日放送、再放送予定:5月31日午前1時~)は、米国の国家安全保障局(NSA)および中央情報局(CIA)の元職員だった、エドワード・ジョセフ・スノーデンが在職中に入手した「スノーデン文書」に基づいて、これまでほとんど知られていなかった日本の諜報機関の実態について明らかにしたスクープである。

(iStock/sarayut)

大韓航空機撃墜事件の「もうひとつの真実」

 米国を中心とする諜報活動においては、英国とカナダ、オーストラリア、ニュージーランドの各国を加えて「ファイブ・アイズ」と呼ぶ。世界的な諜報戦をともに戦っている。米国を頂点として「セカンド・パーティ」、日本はその下に位置する「サード・パーティ」と位置付けられている。

 「スノーデン文書」のなかに、最高機密指定がある「ジャパン・ファイル」が大量に発見された。NHKの取材チームが裏付け取材を積み重ねた結果、日本の諜報機関は米国と一体化して「セカンド・パーティ」にほぼ匹敵する役割を果たしていることがわかった。

 「ジャパン・ファイル」に頻繁に登場する、日本の諜報機関は「DFS」である。これは防衛省の電波部。組織図すらなく、部員は最高度の機密保持を求められる。

 この存在がその姿を現すのは、1983年の大韓航空機がサハリン沖で墜落した事件である。米国はソ連が撃墜した、と国際社会に訴えた。当時のレーガン大統領が主導してソ連の軍事無線が国際連合の安全保障委員会で公開された。それは、DFSの稚内分遣所が傍受したテープであった。

 「目標 撃墜」というソ連の無線の音声が、安保理で繰り返し流された結果、ソ連はついに大韓航空機の墜落の責任を認めた。

 「ジャパン・ファイル」は、この事件に隠されていたもうひとつの真実を記している。「目標 撃墜」の音声テープは2本あった。もう1本は米側が録音したもので、NSAの判断でこれは公開されなかった。誰が、どのような方法で情報を収集しているか、を伏せるために、公表することはないからだ。


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