世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年6月28日

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 5月9日に投票が行われたマレーシアの下院選挙では、建国以来、初めての政権交代が起きた。事前の世論調査を覆す結果だった。92歳のマハティール氏の首相就任は、選挙で選ばれた首脳としては、最高齢者となる。その年齢を思わせないほど、訪日でも立ったままの複数の演説を含め、一連の日程を精力的にこなした。

 1980年代に、日本等に学べという「東方政策」を打ち出し、日本との協力を促進することで、自国の経済発展を進めた。日本もバブル期で好景気であり、1985年のプラザ合意以降の急激な円高もあり、ASEAN諸国への企業進出を加速する条件が整っていた。親日家で知られるマハティール氏は、今回の首脳会談でも、自分は頻繁に日本に来ると述べているが、当時から、よくお忍びでしばしば来日していた。駐日マレーシア大使は、その都度、マハティール首相をお迎えしなければならず忙しそうだったが、今後も、恐らくそういうことになるのだろう。

 前回、マハティール首相は2003年まで22年間、首相の座にあったが、21世紀に入ると、日本のバブル崩壊後の長いデフレ状況と、中国の台頭により、マレーシアと中国との関係が緊密化する。

 そして、現在、中国は、マレーシアを中心とするインド太平洋地域で、経済的プレゼンスのみならず、南シナ海問題に見られるように、軍事的プレゼンスも高めている。

 このような時期に、マレーシアに親日的なマハティール首相が率いる新政権が誕生したことは、日本にとっても悪いことではない。

 日本は、既に、マハティール新政権が誕生する前から、マレーシアとの防衛協力を進める方向で動いてきた。本年(2018年)4月18日には、「防衛装備品及び技術の移転に関する日本国政府とマレーシア政府との間の協定」が署され、発効した。これにより、日本とマレーシアの間で、より緊密な防衛装備協力が可能になる。日本が同様の協定を結んだのは、欧米を含めると9か国目だが、東南アジアでは、2016年2月に締結したフィリピンに続き、マレーシアが2番目である。これにより、日本の安全保障に寄与し、国際連合憲章に反しない等の条件のもと、日本は、関係国に、哨戒機等を供与したり貸与したりできる。実際、日本は既にフィリピンに海上自衛隊の練習用航空機「TC90」5機を譲渡した。これに伴ない、日本は同国にパイロット訓練や整備支援等も行うようになり、両国の関係は深まることになった。今後、マレーシアともこのような協力関係が構築されよう。

 マレーシアは、地理的にインド太平洋地域の中心に位置し、マラッカ海峡もあり、戦略的拠点を占める。法の支配と国際秩序に基づく「自由で開かれたインド太平洋地域」の維持、発展には、マレーシアとの協力は欠かせない。その意味でも、今回の日・マレーシア首脳会談は大きな意義があったと思う。
 

  
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