2024年12月22日(日)

ドローン・ジャーナリズム

2018年8月7日

 富士山頂の火口を一周することをお鉢巡りと呼び、そもそもは富士山岳信仰 「富士講」の信仰登山(登拝)における神事の一つであった。この富士講の富士山頂お鉢巡りを、関係機関から特別な許可・許諾をいただきドローン撮影することができた。まずはこのたいへん貴重な映像をご紹介したい。

Mount Fuji crater taken with a drone / 富士山お鉢巡り 冨士道 神道扶桑教
※本撮影は、冨士道 神道扶桑教の貴重な登拝記録のため、特別な許可・許諾をいただき撮影した。

お鉢巡り

 富士山火口の周りを巡る「お鉢巡り」の由来は、富士山頂にある八つの峰を巡ることから「お八巡り」と呼ばれるようになり、これが転じて「お鉢巡り」となったと言われている。または、火口の形状が「お鉢」に似ていることからそう呼ばれるようになったという説もある。富士山登山は古くは平安時代の末期から行われてきたようだが、富士山信仰「富士講」が江戸時代に日本国内に大きく広まった頃には、すでに「富士講」の「登拝」の中の神事とされ、実施されていたとの記録が残されている。

 富士山八峰は以下の通りである。かつてはこの八つの峰を実際に巡っていたのだが、現在は危険な箇所がありいくつかの峰は通行が禁止されている。

①三島岳(みしまだけ) 3,734m
②剣ヶ峰(けんがみね) 3,776m
③白山岳(はくさんだけ) 3,756m
④久須志岳(くすしだけ) 3,725m
⑤成就岳(じょうじゅだけ) 3,735m
⑥朝日岳(あさひだけ) 3,733m
⑦浅間岳(あさまだけ) 3,722m
⑧駒ヶ岳(こまがたけ) 3,722m

 現在の富士山頂のお鉢巡りは外周コース約2.4km、所要時間は平均1時間35分かかる。登頂の疲労と帰りの時間の制限などから、現代においても挑戦できる人は一部で、意外にある峰々の高低差と長い距離、そして酸素の薄さからかかる高山病と、そう簡単にできるものでもない。

  映像では、富士講の列が三島岳あたりからスタートし、剣ヶ峰に続く最初にして最大の難所「馬の背」をゆっくりと登り始める。剣ヶ峰は富士山頂の最高峰で3,776m。その頂には富士山測候所の建物が見える。富士山測候所は気象観測を目的に1964年に建造されたもので、当時は台風の早期発見を目的としたアンテナを有し、アンテナを守るドーム型の建造物は富士山の代表的な建造物の一つだった。気象衛星など、気象観測の代替え機能が揃った1999年に富士山レーダードームは運用を終了し、撤去された。現在は山梨県富士吉田市の「レーダードーム館」に移設され展示されている。

 空からの映像では富士山の火口はなだらかなようにも見えるが、実際にはかなり起伏のある険しい道をすすむ。箇所によっては足を滑らし滑落しそうな細い道や高低差があるところもあり、油断はできない。

 富士講の一行は、白山岳の麓にある金明水という出水口(現在は水は枯れている)で祈りを捧げ、平地に比べて7割程度しかない酸素濃度の苦しい呼吸を克服し、お鉢巡りを遂げた。

富士山頂の様子

 富士山は言わずと知れた日本一の活火山である。約1万年前に開始した噴火活動で富士山の形はだいたい現在に形になったとのことで、地質学の見地からは富士山は「若い火山」とされている。各種研究によると、富士山頂部からの爆発的な噴火は約2300年前と言われており、それ以降は山頂からではなく山腹や側火山からの噴火が主であるようだ。

 この巨大な火口は別名「大内院」と呼ばれる。直径は約780m。赤茶色、黒、臼茶色の3色の岩色が絶妙なグラデーションを作り出し、じっと見ているとまるで異星の風景に思えてくる。火口の深さは約237mで、これは富士山8合目あたりまで達している。火口の際に立つと、自分が踏みしめている土も、目の前の岩石類も、この膨大な量の土砂が目の前の火口から吐き出され、降り積もり、そしてこの巨大な山体を作り上げたという自然の脅威を強く感じ、その恐るべき質量に圧倒されるのだ。


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