2024年11月25日(月)

この熱き人々

2018年9月25日

 とはいえ、莫大な費用を17歳の高校生がどうやって調達するのか。アルバイトで貯められる規模のお金ではないからスポンサーを探すしかない。そのためには、スポンサーが乗ってくれる魅力を用意しなければならない。調べてみたら、エベレスト登頂日本人最年少記録は20歳だった。19歳で達成すれば記録更新になり、そこでアピールすることができる。逆算すれば今しかない。

 「最年少記録を作ります、サポートしてくださいって、企業やメディアにメールを可能な限り送りました。新聞社が取材してくれて、記事を見て自分にできなかった夢を託すと100万円出してくださった方もいました。高校3年は勉強とトレーニングとお金集めで遊ぶ時間はありませんでしたが、月に1日、遊ぶだけの日を作るようにはしていました」

 学校ではひたすら勉強し、毎晩8時にジムに通って、30キロのベストを着て傾斜をつけたランニングマシンを走り、スクワットなどのトレーニングに励み、帰宅したらまた勉強。合間に遠征サポートを得るための行脚(あんぎゃ)。一人暮らしなので炊事洗濯もしなければならない。すさまじいばかりの集中力と行動力と意志の強さに圧倒される。大学入試が終わり、2学期の期末テストを終えてすぐに荷物を作って、たったひとりでアコンカグアを目指しブエノスアイレスに飛び立ったという。そして、翌年1月3日にアコンカグア登頂。

 当初は、6959メートルのアコンカグアから高地に順応して8000メートル級の山をもう1つ登りエベレストへという計画だったという。つまり7大陸最高峰制覇やグランドスラムは、その過程で追加されていった目標ということになる。

奇跡の生還の後で

 アコンカグア制覇後、高校生最後の3月。南谷は日本の登山チームとともに、八ヶ岳連峰の阿弥陀岳に登った。7000メートル級の山の後の2805メートルは、次の8000メートル級までの間の練習という軽い気持ちで参加したのだが、そこで下山途中に滑落事故にあっている。

 「まさか足の下の雪が崩れるとは思ってもいなかったのですが、頭から真っ逆さまに250メートルほど滑落してしまいました。東京タワーの特別展望台くらいの高さになるのかな。スローモーションのように落ちていって、人生終わるのかって思った時、神様まだ死にたくない! って叫んでました」


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