チャイナ・ウォッチャーの視点

2018年8月24日

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トランプの土俵で戦うべきではない

 次に民営の機械メーカーのオーナーで世界各国に工場を持つC氏と上海のクラフトビールのお店でビールを飲みながら話をした。彼は、大学時代に共産党員になったエリートで、政治の世界に残っていたら、相当偉くなっていたはずと周りの人は言っている(彼は逆に失脚して牢屋に入っていたかもしれないと自虐的に笑っている)。

 彼の会社は、年商100億円程度で、毎年10億円程度は米国に輸出している模様。米国からの引き合い増えている中での貿易戦争、彼も第三国経由の輸出を考えているなど、困っているようであったが、中国、EU、日本の商売も順調だそうなので、それほど切羽詰まった感じでなかった。ただ、今の中国を指して、共産党の歴史をよく勉強しているが共産党員は多いが、経済がわかっている人が少なすぎる。

 このままだと中国で膨大な数の輸出関連企業が倒産することになると心配していた。私から、中国国内市場を解放すればいいのではとの問いに対しては、工業分野では外資、内資の差はそれほどないとの認識で、自動車も外資100%が可能になるとの回答。私から、それでもサービス産業や一部の工業分野ではまだまだではないかとの指摘に対しては、否定はしなかった。

 もう一人、そこに同席していた日系の電子部品メーカーの総経理のD氏。バナナの叩き売りでないのだから、中国は、下手に妥協するべきではない。中国からの輸入製品が高くなれば米国だってそのうち我慢できなくなる部分もあるはず。トランプの土俵で戦うべきでないとの意見。

 それに対して、私から、以下の通り問いかけた。どこまで米国に妥協すれば米国が納得するか、そのように考えてもキリがないのではないか。それよりも、問題は、米国が中国との競争はアンフェアで割負けすると思っているということなのだから、まず、中国側から見てもWTOのルールに則って市場の開放が不十分な部分を開放し、知的財産権についてのよりフェアな制度、運用を浸透させて行けば、自ずと落とし所も見つかるのではないか。

 市場の開放は、中国の民営資本の発展にもつながる。外資もメリット受けるが、中国の内資は資金力や経営ノウハウでも十分外資と渡り合って行けるのではないか。

 彼の回答は、高田の言うことは道理としてはわかるが、なかなか難しいところであると。市場の開放は、国有資本の権益の開放でもあり、そうすると中国の民営資本にとっては有利で、中国経済そのものの成長要因になるのであるが、実は、政府はそれを恐れている。国有資本が権益を失って、それが民間資本の発展につながるとすると、政府としては、経済に対する支配力を失うと考える。だから、道理としてはわかるけど、なかなか怖くて権益を下方できないのが実態と。だとすると、中国のリーダーである習近平が今なすべきことは、国有権益と民間経済のバランスをどこまで妥協して米国を納得させるかという、内政面での調整ということのようだ。

 最後に、週末に、中国に長く駐在し中国情勢に詳しい日系機械メーカーの日本人駐在員の友人とゴルフに行く車の中で米中貿易戦争の話になったので紹介したい。

 まずは、彼のビジネス、中国の輸出産業向けの設備、部品の販売が、ここ3カ月で明らかの弱気に変化しているとのこと。その中で、トランプがどの辺を落とし所として想定しているか、今後の先行きが話題になったのだが、概ね以下のような結論で落ち着いた。

 すなわち、おそらく、トランプのやり方としてトランプ自身、落とし所が想定できているわけではなく、まず、蜂の巣を突っついて大騒ぎにさせておいて、その中で、自分に有利な落とし所を探して行くのではないかということである。

 実は、このようなネゴの手法、中国の政治家や、ビジネスマンも時として取るやり方だ。だから、現在の中国政府は引き続き強気の発言、対処を続けながら、必死に落とし所を探しているのではないか。ギリギリまでガチンコの姿勢を示しながら。それは、11月の米国の中間選挙まで続くのか、その後も継続するのか、米中両超大国の我慢比べはどこまで続くのか注視したい。

  
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