2022年11月26日(土)

Wedge REPORT

2018年8月15日

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吉村慎司 (よしむら・しんじ)

北海道国際交流・協力総合センター客員研究員/北海道建設新聞記者

1971年鳥取市生まれ。同志社大学大学院総合政策科学研究科修士課程修了。97~2010年日本経済新聞社勤務。11年ロシア・ウラジオストク国立経済サービス大学短期留学。
 

――全国的にはコンパクトシティ構想はあまり進んでいないようです。

鈴木:住宅の前に、学校とか集会施設とか、公共施設の集約が大きな要素になります。普通なら小学校や中学校の数を減らす、集会施設を廃止するなどの話が最初のハードルになって、住宅集約の話まで行きません。夕張は財政破たんがトリガーになって、有無を言わさず公共施設の適正化をやることになったんです。夕張では小・中が1校ずつになりました。そこで一息つくのではなくてさらにアクセルを踏んで、住宅の集約に手を付けたのです。

――財政破たんは、住民にどんな影響を与えましたか。

鈴木:行政サービスというのは多くの場合、日常的に感じることは少ないですよね。何か困ったときぐらいしか意識しない。あって当たり前の行政サービスが財政破たんで急に薄まって、それで夕張市民は存在を認知したんですよ。そこに案外お金がかかっていることもわかった。こんな話があります。各地区にある集会所は以前は市が管理していましたが、破たん以降、維持管理を町内会に下ろしたんです。会計も町内会が自分たちでやります。すると、冬場に暖房代や除雪代がこれだけかかるから町内会費をいくら上げなきゃという話になってきて、初めてコスト感覚が出てきた。こうなると「この施設は年に何度も使わないのにこんなに金がかかるのか」と言って、要らない施設を返上する町内会も出てきました。維持するならどうやって維持費をまかなうか、何か場所代を徴収できるイベントでも開こうかなど、地域であの手この手を考えるようになりました。

――市政への関心が高まり、市議会の傍聴が増えたとか。

鈴木:その通りです。夕張には、コンパクトシティだとかJR夕張支線の廃線対応だとか、市の政策を話せる人がたくさんいると思いますよ。東京で、自分の住む区や市の政策を言える人は少ないでしょう。知事の顔はわかっても、区議会議員や区長の名前は出てこないかもしれません。ここは小さな街ですから私自身が各地区を回って、説明をしています。いろいろなことを矢継ぎ早にやっているので、住民には疑問点も多いでしょう。5人以上から申し込みがあれば私が年中無休でお話に伺うという制度もあります。住宅集約を議論していたときは反対派の方々の家に呼ばれ、5時間ぐらいお話したこともありましたが(笑)。

――破たんから10年以上過ぎ、市職員の様子はいかがですか。

鈴木:私が市長になって仕事が増え、職員は大変な思いをしています。給料も当初は40%カットでした。でも市の借金返済を進めて、市民生活も良くなっていけばそれに合わせて給料は必ず戻していくと言っています。実際に削減幅は40%から30%、15%、9%、7%まで改善しました。うちは日本で一番給料が上がっている自治体ですよ。ある意味、私たちは崖っぷちなので頑張るしかありません。でも本当は崖っぷちに追い込まれる前にやるべき。悪い言い方ですけど、住民に危機を感じさせなくするのが行政手腕だ、みたいな考え方がある。そうやって問題を先送りした方が選挙にも通りやすいし、役所批判も少なくてすむ。だけど本当は追い込まれていて、夕張の場合誰が責任を取ったかというと市民や職員なんですよ。国が責任を取ってくれるわけじゃないんです。

現在発売中のWedge8月号では、以下の特集を組んでいます。
■限界自治 縮小ニッポンを生き抜くヒント
吉村慎司、山口亮子、Wedge編集部
INTRODUCTION 過疎化するニッポン 高齢社会を支えられるか
PART 1      行政サービス最低の夕張 町を畳み賑わいを取り戻す
INTERVIEW         北海道夕張市長・鈴木直道氏「行政の危機を住民と共有することが第一歩」
PART 2                過疎が進んだ中山間地 住民組織で自治を取り戻す
INTERVIEW         等身大の姿に向き合い将来に備え始めた人々 作野広和(島根大学教育学部教授)

  
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◆Wedge2018年8月号より

 

 

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