インターネット依存症、ネットゲーム障害、オンラインショッピング依存、オンラインポルノ依存、ゲーマー血栓症……。
インターネットの負の側面――とりわけ人間の心身に与える悪影響――が、ようやく真剣に議論されるようになってきた。
「研究者たちが標準的な依存症の基準を持ち出し、それに見合う証拠が十分にあるかどうかを議論している一方で、問題はどんどん拡大している。この事実を否定することはできない」。
本書の著者がそう警鐘を鳴らすように、私も、社会はこれまでインターネットの影響にあまりにも楽観的であり過ぎた、と考える者の一人だ。
もちろん、テクノロジーには正と負の両面があり、どちらになるかは使い方次第。いうまでもなく、インターネットには便利かつ教育的な側面が多大にあるし、もはやインターネットを遠ざけることはできない。
「勉強をしたり、仕事を得たり、研究をしたり、情報を得たり、医療給付を手に入れたり、請求書への支払いを行いたかったりしたら、インターネットを利用する以外の選択肢はありえない社会へと、私たちは移りつつある」のだ。
「人間が生きていくうえでテクノロジーが欠かせない存在だというのなら、それと共に生きる術を学ばなければならない」と、著者は語る。「しかしそれは、私たちが主導権を握る形においてだ」と。
子どもの発達と心理にサイバー空間が与える影響
本書の著者は、アイルランド出身のメアリー・エイケン博士。ユーロポールのサイバー犯罪センターのアカデミック・アドバイザーを務め、大学で犯罪学を教えるかたわら、インターポール、FBI、ホワイトハウスなどの仕事にも携わる「サイバー心理学者」である。
サイバーセキュリティ、組織的サイバー犯罪、サイバーストーキング、インターネット人身売買、オンライン上の子どもの権利などが専門という。
訳者あとがきによると、原著『サイバー効果:サイバー心理学のパイオニアによるオンライン上での人間行動の変化に関する解説』は、全訳すれば600ページもの大著なので、邦訳は著者の許可を得て、「子どもとネットの関係」に絞って再構成したそうだ。