世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年9月3日

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 これに対し、シドニー大学のCharles Edel 上席研究員が書いたForeign Affairs誌ウェブサイトのSnapshotに掲載の8月17日付の‘Cambodia’s Troubling Tilt Toward China’と題する論文は、カンボジアの事態は東南アジアで進行中の大きな闘いの縮図であり、中国に取り込まれると一国の政治と政策に何が起こり得るかを示すものだと指摘し、まだ絶望という訳ではないとして、米国がインド太平洋戦略の一環として関与を強めるべきであると論じている。具体的には、7月30日のポンペオ国務長官の演説で示された民間投資の誘導の他、人的交流の強化、プロパガンダと虚偽情報に対抗するためのVoice of AmericaとRadio Free Asia の活用などを挙げている。

 上記二つの論調では、Kurlantzickの分析が正しいであろう。Edelは、ラジオ局を活用すべしというが、放送局は既にフン・センに妨害されている。中国に対抗するのであれば、公的援助資金の投入が欠かせない。色々議論しているものの、あまり効果があるようには思われない。

 カンボジアで強権政治が今後も続くという意味でも、カンボジアが今後更に中国になびくという意味でも、やはり手遅れと言う他ないであろう。日本は、カンボジアにおける影響力保全に腐心している。米国とEUが先の選挙への支援を停止する中で、さすがに選挙の正統性を認めることになる選挙監視団の派遣はしなかったが、8億円相当の投票箱等の選挙用物品を供与した。日本には、90年代にカンボジア和平に深く関与したという経緯もある。

 今後は、この地域に第2、第3のカンボジアを作らないよう努めることがより重要となろう。中国は、カンボジアの選挙を舞台にサイバーによる近隣諸国への政治介入の予行演習を行ったと報じられている。中国は、あらゆる手段を用いてこの地域への影響力の浸透を図るであろう。当面、ミヤンマーが中国の手に落ちないよう気配りを続けるべきである。ミヤンマーにはカンボジアよりは骨っぽいところがあるように思われる。

  
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