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WORLD CURRENT

2011年6月21日

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 ビン・ラディン殺害を機に、テロとの戦いに一区切り付け、アフガニスタンからの名誉ある撤退を実現する。中東の包括和平を実現し、この地域への過剰介入の荷を軽くする。いずれも、01年の同時多発テロこのかた膨張した国防費を軽減することにつながる。中東民主化戦略は、米国の威信回復と国防費の軽減による米財政赤字削減の一石二鳥を狙っているのである。

 経済援助という飴玉も用意している。チュニジア、エジプトの代表をG8サミットに招き、民主化と引き換えに援助を約束したのはその典型だ。世界銀行のゼーリック総裁はすでにエジプトとチュニジアに対し、資金支援する方針を明らかにした。クリントン米国務長官とガイトナー米財務長官は5月25日、G8参加国に中東地域に対し経済的支援で協力を要請する共同書簡を出している。

 オバマ大統領はロシアの取り込みにも余念がない。メドベージェフ・ロシア大統領とも5月26日、G8サミットに先立ち会談した。目玉は、省エネルギー技術など広範な経済協力と、ロシアの世界貿易機関(WTO)加盟への支持だ。念願のWTO加盟支持をチラつかせることによって、米欧との共同歩調をとるようロシアに求めたといえる。その作戦はひとまず成功したようにみえる。

 民主化を強調する裏で、G8は中国に対し微妙な立ち位置をとり出した。サミットの討議テーマとして注目されるのは、インターネットだ。中東民主化がツイッターやフェイスブックを舞台にしたSNS革命だったことを踏まえ、「自由、民主主義、人権を促進する有益な手段」とうたった。さらに中国のネット規制を念頭に、「ネットの検閲やアクセス制限は容認できない」と指摘したのだ。

 中国の台頭に対し、米国が音頭をとり、歯止めをかけようとしているさまがうかがえる。中国も黙ってはいない。ビン・ラディン殺害後、まもなくパキスタンのギラニ首相が北京を訪問した。ギラニ首相はそこで、イラン国境に近いグワダル港を中国に管理してもらうとの約束を得た。米国がパキスタンへの援助を減らすなら、ほかにも頼みにする大切な国はあることを示した。

中国利権を取り戻す

 折しも中国を訪問した北朝鮮の金正日総書記は、中国首脳と会談し食料やエネルギーの支援を要請した。北朝鮮の核問題を巡る6カ国協議の早期再開に向けた態勢を、両国は整えようとした。金正日総書記の後継体制を固めるのが狙いであるのは言うまでもない。

 忘れてならないのは、温家宝首相が来日し、フクシマを舞台に日中韓の首脳そろい踏みのパフォーマンスを演じていた最中に、金総書記が中国を訪ねていたという事実である。「アラブの春」とは全く別の「東アジアの冬」は、依然として続いている。

 もうひとつ。民主化やネットという錦の御旗(大義)をかざすことは、米国がテロとの戦いに忙殺されているうちに、中国が拡大した資源、食料利権を取り戻す戦略にもつながる。リビアやスーダンが典型だが、中東やアフリカの独裁政権と手を握り、中国人労働者を入植させて利権をあさる。援助と民主化圧力の硬軟を取り混ぜて、そうした政権への影響力を高めようという方向が、今回のサミットでハッキリしてきた。

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