2024年4月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年9月21日

 アサドが大量のスンニ派住民の帰還を認めないのではないかという、ガードナーの指摘は、その通りであろう。また、米国では、リンゼイ・グラハム上院議員(共和党・サウスカロライナ州選出)が、シリアの破壊はイラン、ロシアの介入の結果ひどくなったのであり、その再建資金を米国に要求するのは筋違いである、ロシアはシリア再建に関心はなく、アサドがシリア全土を制圧することを望んでいる、と批判している。

 オバマ政権時代、化学兵器使用について米国がシリアを攻撃しようとした際に、ロシアが米国に対し「我々がシリアに化学兵器を廃棄させる」と言って、米国を止めたことがあった。シリアについての米欧の思惑とロシアの思惑は基本的に違うのであり、ロシアと協力してシリア情勢を何とかしようとの発想は、うまくいかない。今回のロシア提案についても注意深く対応すべきであろう。

 トランプの本音は、何とか早くシリアから撤退したいということであり、そう公言している。軍などの助言を受けて、やむを得ずシリアにとどまっているのであろうが、迫力を欠くことおびただしい。トランプは米国が毎年シリアに出していた2億3000万ドルの安定化基金拠出を「ばかげている」として、やめてしまった。米のシリア情勢への影響力は縮小している。

  
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