2011年7月9日、中国国家統計局は、6月の消費者物価指数(CPI)が前年同月に比べ6.4%上昇したと発表した。伸び率は5月の5.5%を大幅に上回り、08年6月の7.1%以来、3年ぶりの高水準となった。中国経済は深刻なインフレにあることがよく分かる。
インフレの中で、食品価格の上昇率はとくに著しかった。6月の食品価格は全体で14.4%も上昇し、豚肉の価格上昇率はなんと57.1%という驚異的な数値であった。
ギリギリの線で生活している数億人単位の貧困層が存在している中で、食品を中心とした物価の大幅な上昇は実に深刻な社会問題でもある。インフレの進行がそのまま続けば、いずれ政権の維持を危うくするような社会的大混乱が起こりかねない。インフレの一つで、中国の経済と社会の両方は風雲急を告げる状況となっているのである。
インフレ退治に必死の中国政府
中国政府は当然、問題の深刻さをよく知っている。だからこそ、2011年に入ってから、中国政府は「消費者物価指数を4%以下に抑える」との目標を掲げて、インフレ抑制のための一連の金融措置を講じてきた。今年2月、4月、7月に3回にわたって政策金利を引き上げたほか、1月から6月までの半年間、「月1度」という前代未聞の高い頻度で預金準備率の引き上げを断行してきた。インフレ退治のために、中国政府は必死だったのである。
しかし、それほどの高密度の金融引き締め政策を断行したにもかかわらず、インフレが収まるような気配はまったくない。今年に入ってから消費者物価指数は上昇する一方で、6月には上述の6%台に上った。そういう意味では、少なくともこの時点において、「消費者物価指数を4%以下に抑える」という中国政府の政策目標はすでに失敗に終わったといえよう。
資金難、中小企業倒産ラッシュ……
その一方、今年から実施されている一連の金融引き締め策は深刻な副作用を引き起こしている。金融引き締めの中で各金融機関の融資枠が大幅に縮小された結果、多くの中小企業が銀行から融資をもらえずにして大変な経営難に陥っているのである。6月の中国経済関係各紙を開くと、「資金難、中小企業倒産ラッシュが始まる」、「長江デルタ、中小企業生存の危機」、「温州地域、中小が2割生産停止」などのタイトルが踊っているのが目につく。金融引き締め策実施の結果、国内総生産の6割を支える中小企業が苦境に立たされていることがよく分かる。