台湾の元総統・李登輝さんが、今でも日本の若者と積極的に交流しているワケとは――? 唯一の日本人秘書である早川友久さんが、李登輝さんの言葉の真意を読み解きながら、その素顔を明かしていきます。(⇒この連載のバックナンバーを見る)
李登輝のもとを訪れたいと希望する日本人は多い。95歳となり、体力的に無理がきかなくなってきた最近こそ、受ける来客数はセーブしているが、相変わらず日本からの来客は多く、毎週のようにアレンジされているときもある。
そばにいる私から見ると、はっきり言って李登輝は年寄りらしくない。アメリカ留学の経験もあるから、ハンバーガーも食べるし、暑い日などは来客が終わると「コーラが飲みたい」などと言ったりもする。常にNHKニュースを見ているし、日本から送られてくる月刊誌にも目を通すから、最近日本で流行っているものも良く知っている。何か思い出せないことがあると「ちょっとそのモバイル(スマートフォンのこと)で調べてくれんか」と言ったり、来客に「私のフェイスブックがあるよ。今度見てごらん」などと言って驚かせたりする。
とはいえ、李登輝はもともと農業経済学という、数字を扱う学者だったわけで、米国留学時代には統計学の一環でコンピューターにも触れているから、年配者だからコンピューターには疎いだろうと、思い込むのは早合点だ。時にはタブレットを手にして「(指を)こうやって下げていけばいいんだな」などと自分で写真を見たりしているのを見ると、新しい技術やモノに対する「忌避感」よりも「好奇心」や「関心」のほうが強いことがよく分かる。そうした強い「好奇心」と、日台関係の利益になることが何か出来ないかという思いが、日台のIoT同盟を呼びかけたり、台湾和牛の研究推進の原動力になっている。