よくないのは「酒の飲み過ぎ」
プリン体が代謝された結果に生ずる尿酸は、普通なら、腎臓で濾過されて(尿として)体外に捨てられる。“何らかの原因”によって、血液中に多量の尿酸が滞留したのが「高尿酸血症」であり、その状態が続くと「痛風」という症状が現れる。
高尿酸血症を招く“何らかの原因”は2つある。その1つは、プリン体の代謝が盛んに行なわれて、尿酸が異常に多く合成されること。2つめは、血液中の尿酸を腎臓から(尿へと)排泄する機能が低下すること。この両方ともがアルコール摂取と深く関わっている。
アルコールは前者の作用(体内での尿酸の合成作用)を促進する。そのため大量に飲酒をすると、血液中に多量の尿酸が送り込まれる。ただし、この作用は「ビールで強く、他のアルコール飲料では弱い」ということではない。お酒の種類にかかわらず(日本酒であっても)大量に飲めば血中尿酸値を上げる【※1】。つまり、「ビールの飲みすぎがよくない」のではなく「お酒の飲みすぎがよくない」のだ。
また、後者の機能低下にもアルコールが関わっている。血液中の尿酸は、一定以上に増えると腎臓における濾過作用が高まり、通常なら、血液中の尿酸値が高くなりすぎないようになっている。しかし、アルコールはその濾過作用を低下させることもわかっている。
そのため、大量に飲酒をすると「体内での尿酸の合成量が多くなる」ことに加えて「尿酸の体外への排泄が少なくなる」ために、ダブルパンチで高尿酸血症になるリスクが高まるのである。すなわち、「ビールを避ければいい」のではなく「節酒を心がける」ことが肝要だということになる。
肥満も痛風を促進する
飲み物だけではなく、食べ物にも似たようなことがいえる。
プリン体はきわめて多くの食品に含まれているので、食品から摂取するプリン体量も、けっして無視しできるわけではない。食べ方によってもプリン体の摂取量は変わってくる。動物性食品(魚類や肉類)のほうが、植物性食品(穀物類や野菜類)よりもプリン体を多く含んでいるので、高尿酸血症のリスクは高くなる【※2】。ただし、動物性食品であっても乳製品にはプリン体はほとんど含まれない。
このようにけっこう複雑であるばかりではなく、私たちの体内でプリン体から産生される尿酸の量も少なくはないので、食べ物にさえ注意をしていれば大丈夫というわけではない。
じつは、肥満者では前項で書いた「尿酸の体外への排泄機能が低くなる」という研究がある。つまり仮に、プリン体の少ない食べ物ばかりを選んで食べていても、食べすぎることによって肥ってしまうと、血液中の尿酸を体外に排泄しにくくなるために、高尿酸血症になるリスクが高まってしまうのだ。
食べすぎと同じく、運動不足も肥満の原因なので、そちらにも気をつけなければならない。さらに運動習慣は乳酸値を下げる働きもするという研究もある。食べすぎない・運動不足にならない、そしてその結果、肥満しない・・・・ということが高尿酸血症を軽減し、痛風の予防に役立つことになる。
プリン体の多い食品【http://www.tufu.or.jp/pdf/purine_food.pdf】を覚えてそれを避けるのは大変な労力を要する。覚え間違いもあるだろうし、「多い食品と少ない食品の差は微妙」でもある。そもそも、酒席でイチイチそんなこと実行してられない。つまりは、たいていの場合「この努力は無に帰す」ことになりがち。
「プリン体の多い飲食物を避けること」に汲々とするよりも、「食べすぎない・飲みすぎない・運動不足にならない」ことのほうが実践的である。
それは面倒なので、足の親指の付け根が痛いくらい我慢しようと考える人もあるかもしれない(いつもいつも痛いわけではないし・・・・)。しかし、それはダメ! 血液中の尿酸の結晶は足だけを傷害するわけではない。他の内臓、たとえば“肝腎かなめ”といわれる腎臓をも傷害することがわかっている。足が痛くはなくても、腎不全(治療が困難で、致命的でもある重大な疾病)に襲われるリスクもある。けっして高尿酸血症を放置してはならない!
【※2】『佐々木敏の栄養データはこう読む!』(女子栄養大学出版部発)p218図2
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