2024年11月22日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2018年11月3日

疑問符の付くタイの高速鉄道における日中協力

 一帯一路は、当面投資先行で、収穫はまだまだ先になると、中国内でも冷静な分析する向きもあるので、あまり期待しないほうがいいかもしれない。タイの高速鉄道を日中協力でというのはいい話ではあるが、日本の新幹線技術の中国への提供で日本の企業側に相当な不信感がある話を聞いているので、そうした不信感を払拭しないでチームワークを組めるのかコンサルタントしては心配だ。

 もし、日本企業側も前向きに考えているのであれば、雰囲気にのまれずに立ち止まって冷静に検討し、順を追って対応することをお勧めしたい。これまで多くの日中企業間の紛争処理をしてきたものとしては何か変な予感がする。

 このような状況下、日本は市場もあるし、技術もある。さらに、すでに多くの企業が中国にサプライチェーンをすでに構築している。日本への期待が高まるのは自然な成り行き。中国が自信をつけてからは、これまでどちらかというと中国からそっけなくされていた間のある日本企業にとっては、中国市場が一旦調整局面を経てもこれからも発展すると考えるのであれば、チャンスであるのは間違いない。

 しかしながら、日本は米国の同盟国の中でも多分最も聞き分けの良い国で、米国とのバランスに細心の注意を払いながら中国との連携を進めて行くという、ここでもリバランスが必要になってくる。日本企業としては、安倍首相の外交力に期待する一方で、その点は、中国も十分理解しているはずなので、お互い辛抱強い大人の対応が必要かもしれない。

 また、南沙諸島の問題などでは日本は米国に同調せざるをえず、尖閣問題も含めて安保上では日中間の一定の緊張は維持される中での経済連携を覚悟しなければならないのであろう。私はこのような経済連携と安保上の緊張関係が同居する矛盾した状態が日中関係の「新常態」になるかもしれないと思うがどうか、と中国の友人たちに聞きまくっているが、今のところ受けは悪くない。要するに中国側もあまりカリカリするなと言いたいにであるが。余談になるが、私は、ロシアとの北方領土問題が進展しそうな状況も日中関係の安定化に寄与するかもしれないと密かに期待している。

 世界政治経済のリバランスの中で、日本企業は自分のポジションを如何にリバランスさせて行くべきか、企業にとっても分岐点であるが、よく見ると、変化の中に色々とチャンスがありそうでワクワクする。

  
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