2024年12月11日(水)

ネルソン・コラム From ワシントンD.C.

2011年8月4日

 WEDGE Infinityの読者の皆さんは今月、米国の財政危機や北朝鮮問題、津波・原子力災害について考えるのをやめ、日米両国にとって長期的に極めて重大なこと、すなわち国際舞台で主役に躍り出ようとするインドの台頭に注目してもいいかもしれない。

 そこで、サミュエルズ・インターナショナル・アソシエーツの同僚であるソーラブ・グプタ氏に現状に対する見解を求めたところ、快く応じてくれた。インドと米印関係の分析にかけては今やワシントンの若きスター。ちょうどクリントン国務長官がインドに行ったばかりでもあり、わたくしの代わりに彼の鋭利な解説にご注目いただきたい。

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 過去10年間というもの、世界的にもアジア地域でも、一変した米印戦略関係が約束する無限の恩恵について多くのことが書かれてきた。国際公共財の保護から民主主義の価値観の普及促進、一国によるアジア支配の阻止に至るまで、「自然な同盟国」である米印のパートナーシップは21世紀の安定と繁栄にとって「不可欠」だと見なされている。

 一方、そうした協力の限界については、あまり指摘されてこなかった。だが、7月下旬にヒラリー・クリントン米国務長官が2回目となる年次米印戦略対話に出席し、ニューデリー訪問予定を終えた今、両国関係の限界はいやでも注目せざるを得ないものになった。

 バラク・オバマ米大統領の個人的な働きかけにもかかわらず、インド政府は4月下旬、インド空軍に第4世代の新型戦闘機を供給するサプライヤーの選抜候補リストから、最有力候補だった米国企業2社を落とした。インド政府は最近、第5世代戦闘機の共同開発に向けてロシア政府と設計に関する仮契約を結んだため、この分野での米印協力の機会は絶たれたように思える。

 同じく4月には、インド政府は米印の2国間戦略対話を日米間の対話と同じ「2プラス2(外務・防衛担当閣僚)」形式に格上げする意思がないことを示唆し、この形式による協議の芽を摘んだ。目先の失望感は別として、米印防衛関係を深化させる最大の障害となっているのは、戦略目的の根本的な不一致だ。

防衛の相互運用性に見切り

 2000年代初頭から半ばにかけての構想段階では、2国間の防衛協力、なかんずく海軍同士の協力は、急速に発展する米印戦略的パートナーシップの代表であり象徴であって、最も貴重な要素と見なされていた。「大中東圏」に関してであれ「インド太平洋」地域についてであれ、米国側としては、インドに対して見込みとまで言わないにせよ2つの期待があった。

 1つ目は、インド政府は広大なインド洋地域における米国政府の主たる安全保障上のパートナーになり、次第に米軍とともに地域の有事に対応する武力行使の計画立案に携わるようになるという期待だ。言うなれば「インド洋における日本」、それも憲法第9条の制約がない日本のような存在に、インドになってほしいとする願望である。

 2005年の「米印防衛関係の新たな枠組み」文書がこうした考えに信憑性を持たせた。この文書は概念上、人道・災害支援活動から「拡散防止のイニシアティブ(PSI)」のような関わり、そして恐らくは国連の明確な信任を欠く「有志連合」形態での介入に至るまで、インドの広範な協力を想定していた。「共通の利益にかなう・・・多国籍作戦」という言葉が示していたのはそうした可能性だ。

次ページ 2つ目の期待は「中国包囲網作戦」への参加


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