トランプの対策
中間選挙が終了すると、トランプ大統領は早速、ロシア疑惑捜査の対策を打ちました。ジェフ・セッションズ米司法長官を更迭し、マシュー・ウィテカー司法長官代行を後任に充てたのです。
そのタイミングに注目です。トランプ大統領はセッションズ司法長官を中間選挙前にクビにすれば、選挙結果に影響を及ぼすと計算していたのです。
ウィテカー司法長官代行は、ロシア疑惑捜査チームを率いるロバート・モラー特別検察官に批判的な人物です。トランプ大統領は否定していますが、ウィテカー氏が、モラー特別検察官を手綱であやつることを望んでいるとみてよいでしょう。
指示命令系統では、トランプ大統領はモラー特別検察官を解任できませんが、ウィテカー司法長官代行はできます。ウィテカー氏は捜査範囲に制約をつけることも可能です。
例えば、捜査範囲をトランプ陣営とロシアとの共謀及び司法妨害の2点に絞り、トランプ大統領が懸念している脱税疑惑の捜査を外すことも選択肢にあります。加えて、モラー特別検察官の捜査チームに対する予算削減もあり得ます。要するに、トランプ大統領はウィテカー司法長官代行が、モラー特別検察官に対して影響力を行使し、捜査をコントロールすることを強く望んでいるのです。
次に、民主党下院がトランプ大統領や共和党が望む法案を阻止した場合の対策です。これもすでに実行しています。中間選挙の際中、同大統領は共和党候補の応援演説集会で「対立構図と殺し文句」を使い、熱狂的な支持者に訴えていました。
例を挙げてみましょう。大統領は「抵抗対結果」という対立構図を作り、民主党を「抵抗勢力」と位置づけ、「民主党は抵抗をする。共和党は結果を出す」と強調しました。この際、抵抗(resist)と結果(result)という「r」で始まる用語を選択し、音節を整え、有権者の記憶に残る仕掛けを作っています。
加えて、女性、若者、ヒスパニック系、アフリカ系、アジア系及び性的少数派(LGBTQ)から構成された「異文化連合軍」に対する対策です。20年米大統領選挙で、異文化連合軍はトランプ大統領の白人労働者、退役軍人、キリスト教右派、白人至上主義者及びネット上で陰謀説を展開する「Qアノン」のフォロアーを含めた岩盤支持層に対する対抗軸になります。そこで同大統領は、20年の再選に向けて熱狂的な岩盤支持層を強固にすべく、彼らの利益となる政策や発言を増していくでしょう。