2020年大統領選挙への影響は
中間選挙が終わった今、アメリカ政治は2020年大統領選挙に向けて動き始めた。今回の中間選挙は来る大統領選挙に向けてどのような意味を持つのだろうか。
共和党は、上院で多数党の座を死守することができた最大の要因が選挙戦終盤に入ってからのトランプ大統領による選挙活動だったことで、仮にトランプ大統領が再選に向けて出馬を表明した場合、党内から対抗馬が生まれる雰囲気ではほぼなくなったといっていい。しかし、下院選の結果が示す通り、2017年1月の政権発足以降、大統領選の結果に大きな影響を与える無党派層が急速にトランプ大統領、そしてトランプ大統領に有効なチェック機能を働かせることができない議会共和党離れを起こしていることも明らかだ。共和党の指導部は2020年に向けて頭の痛い日が続くだろう。
対する民主党も、下院で過半数は奪回したものの、選挙終盤の追い込みではやはり、オバマ前大統領の発信力・動員力に頼ることとなり、2020年大統領選挙に向けて不安を残した。その一方で、保守的なテキサス州で現職のテッド・クルーズ上院議員に肉薄、惜敗した弱冠46歳のベト・オローク下院議員や、リベラルであることを公言しながらも、2016年大統領選挙でトランプ大統領が勝利したオハイオ州で楽々と3選を果たしたシェロッド・ブラウン上院議員、同じく中西部のミネソタ州で圧勝したエイミー・クローブチャー上院議員など、大統領選挙に向けて将来性を感じさせる政治家も何名か出てきており、今後の展開が注目される。
内向きが進むアメリカ
日本では、選挙後のトランプ政権の対日政策への影響について関心が集まっているが、今回の選挙で外交政策は全く争点にならなかった。このため、基本的な外交路線は、選挙後も大きく変化はないものとみられる。特に、アジア政策については、対中政策についてはトランプ政権の強硬な政策が議会でも超党派で支持を得ており、大きな変更はない。また北朝鮮政策については、6月のシンガポールにおける米朝首脳会談が拙速に過ぎたという批判は出たものの、その後、核問題をめぐる米朝交渉が膠着するにつれ、トランプ政権が安易な妥協をしないことについては議会でも支持があり、逆に人権問題などでより強硬な姿勢を見せるべきだという声もあるほどであるため、こちらについても大きく変更はないものとみられる。
対日政策についても大きな変更はないものとみられるが、国内問題で成果を上げることが困難になることがほぼ確実なトランプ大統領が「目に見える成果」をあげる必要性に迫られ、通商問題で日本をはじめ、二国間交渉に入っている国に対する圧力をさらに強める懸念は残る。
ただし、最大の懸念は、2019年以降、大統領が国内問題や自身のスキャンダルへの対応に時間をとられ、外交問題に割く時間や関心が限られる可能性が現実味を帯びてきているということである。まずは、ペンス副大統領が日本、シンガポール、オーストラリア、パプアニューギニアの4か国歴訪でどのようなメッセージを発するか、特に、11月17日にAPEC・CEOサミットで行う予定の講演で「自由で開かれたインド太平洋」戦略について何を語るのかを注視する必要があるだろう。
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