2024年4月24日(水)

安保激変

2018年11月12日

自分の身辺の疑惑再燃を恐れるトランプ大統領?

 特に気になるのは、2016年大統領選挙選へのロシアの関与や、大統領選時ら問題視されているトランプ大統領の納税記録公開問題などに関する調査の行方だ。下院を民主党が奪回し、各委員会で委員長の地位をすべて取り戻すことで、トランプ大統領に対して、召喚状を発出して、納税申告書の提出、「ロシアゲート」をめぐるFBI報告書の提出、コーミーFBI長官更迭をめぐる一連のやり取りに関する情報公開などを積極的に追及することが可能になる。

 中間選挙翌日に大統領が行うことが恒例の記者会見では、これまで以上にCNN記者など、自分の気に入らない質問を繰り返す記者をカメラの前で罵倒するなど、「メディアに対する大統領の姿勢が新たな底打ちをした」(某米大手メディアホワイトハウス担当記者)という状況が生じたが、この記者会見におけるトランプ大統領の逆切れぶりは、上院選で過半数を共和党が維持したことをことさらに強調してはいるものの、やはり下院で民主党が過半数を奪回したことで、来年1月以降、自分の身辺の色々な疑惑が再燃することをかなり恐れていることの現れではないかともいわれている。

 特に、2016年大統領選挙時に掲げた所得税大幅減税などは、上下院で「ねじれ」が発生する今後は実現はほぼ不可能になる。大統領令で政策変更できる問題についてはほぼやりつくした感があり、2020年大統領選挙までに何らかの実績を残すためには、民主党と協力する必要があるのだ。それなのに11月7日の記者会見で見せたような敵対的な姿勢を民主党下院指導部に対して取り続ければ、あらゆる法案は膠着し、2019年初頭でトランプ大統領はレイム・ダック化してしまうだろう。

下院民主党も難しいかじ取りを迫られる

 しかし、下院民主党にも悩みはある。CNN出口調査などによれば、選挙で「民主党候補に投票した」と答えた人の約8割がトランプ大統領弾劾を支持しているという結果を見れば、民主党が下院で多数党に返り咲いた大きな理由の一つは、有権者が下院に対して、政権に対する立法府としての監視機能を再び機能させることを期待していることが挙げられる。投票日翌日にさっそく、ジェフ・セッションズ司法長官に辞任を促し(実質は解任)、長官代行にホワイテイカー同長官首席補佐官を充てる旨発表したが、同長官代行は過去にムーラー特別捜査官の捜査が「行き過ぎ」であるとの意向を公にしている経緯があるため、ムーラー特別捜査官を司法長官や大統領の一存で罷免できないように法律で同捜査官の地位を保護するべきだという声が既に民主党議員の間でも上がり始めている。

 一方、召喚状を頻発して、国民の生活に実質的な影響のある問題を立法を通じて解決する道を開けなければ、単なる抵抗勢力としてみなされてしまうリスクもある。そのため、今回の選挙で得た支持を次の選挙、つまり2020年大統領選までで維持するために、トランプ政権を厳しく追及する一方で、国内のインフラ整備、医薬品価格抑制などのような、政権と歩み寄れる余地がある問題についてはいかに協力して、何らかの実績を残すか、下院民主党も今後、難しいかじ取りを迫られることになる。

 今回の選挙、特に上院選でトランプ大統領の固定支持層のトランプ大統領への支持の強さが明らかになった。このことは、2020年大統領選挙にトランプ大統領が再選出馬の意向を示した場合、ほぼ確実に本選の候補となることが予想される。


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