2024年11月22日(金)

栖来ひかりが綴る「日本人に伝えたい台湾のリアル」

2018年12月18日

印象に残ったワード「トップ3」

 それでは、筆者自身の2018年に印象に残ったワード「トップ3」を紹介しよう。

1・両岸一家親……台湾と中国は家族みたいなもの

2・中國一點都不能少……中国はひとつでも絶対に欠けてはならない

3・同温層……同じ意見の人たち(日本のネット用語でいう「同クラスタ」)

 1は、台北市長に二期続けて当選した柯文哲(クー・ウェンツァ)が発言し、「中国統一派」ではないかと問題にされた言葉だ。実際のところ、中台問題における柯の立場は不明だが、民進党・国民党からも、今後の柯の動向は一番の注目を集める。

 2は中国と台湾とをめぐる芸能関係のニュースで度々のぼっていたが、今年の金馬奨(中華圏を代表する映画賞)で登壇した中国の俳優が口にしたことで一気に広まったフレーズ。

 3の「同温層」は今回の選挙が終わって、もっとも身に沁みた言葉である。心地よく過ごせる「ぬるま湯」とでも言おうか。選挙が終わって、「いかに自分が同じ意見の層のなかでぬくぬくとしていたか」という台湾友人たちの反省を数多く聞いたが、そこで使われた単語がこの「同温層」だった。

再認識した「台湾の魅力」

 筆者はこの連載で「台湾のリアル」というタイトルを頂戴し、毎月記事を書かせてもらってきた。しかし私自身も「同温層」の意見を見聞きしてきたに過ぎず、「台湾のリアル」を全く分かっていなかったと今回の選挙で自覚したし、このグーグルの流行ワードを見て改めて感じている。

 実際この一年に、私のまわりの友人で「運彩」に一喜一憂している人はいなかったし、中国の宮廷ドラマにハマっている話も聞いたことはなかったし、みんな同性婚に賛成していたし、韓國瑜を支持している人もいなかった(私には話さなかっただけかもしれないが)。私がこうした執筆の仕事をしていることもあり、台湾で繋がっている友人の多くも研究職や文化・出版業と偏っていることは否めないが、12年も台湾に関わり、本を出したりしながら、私は台湾のことを何にも分かってないのだなあ……それが2018年を終えようとしている今現在の正直な感慨だ。

 それでも、日本で台湾に興味を感じている人はどんどん増えていると肌身で感じた年でもあった。台湾がそうしたポテンシャルを持つ場所だからで、それは間違いないと思う。光の当て方で万華鏡のように違う表情を見せる、これこそ台湾の魅力である。

 という訳で2019年の抱負は、ぬくぬくの中からだけでなく「同温層」の外にも回りながら、私の感じた「台湾のリアル」を引き続きお伝えしたいと思っています。

 今年も残り少なくなりましたが、どうぞ皆様、良いお年をお迎えください。

 祝你新年快楽!

栖来ひかり(台湾在住ライター)
京都市立芸術大学美術学部卒。2006年より台湾在住。日本の各媒体に台湾事情を寄稿している。著書に『在台灣尋找Y字路/台湾、Y字路さがし』(2017年、玉山社)、『山口,西京都的古城之美』(2018年、幸福文化)、『台湾と山口をつなぐ旅』(2018年、西日本出版社)がある。 個人ブログ:『台北歳時記~taipei story』

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