2024年11月23日(土)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2011年9月6日

 「中国は、昨年9月に尖閣諸島問題が発生して以降、一層悪化した日本国民の対中感情をどうすれば好転するか頭を抱えており、昨年末以降、対日戦略を調整したようだ」

 5月に来日した温家宝首相は、宮城、福島両県の被災地を訪れ、被災者らと交流し、特に原発事故に見舞われた福島では、隣にいた菅直人首相よりも好感を持たれた。福島から東京に入ると、真っ先にSMAPメンバーと会見した。SMAPは日中両国の若者に人気が高く、彼らを取り込めば、日本の若者の対中感情悪化を少しでも食い止められる、と温家宝自らも考えたからだ。

 SMAP公演は9月16日に、北京の工人体育場で行われるが、8月中旬、SMAPの中でも中国で最も人気のある木村拓哉が単身で北京を訪れ、中国メディア向けに記者会見を行った。それ自体は北京公演の宣伝であるが、筆者が驚いたのは、記者会見場で配られたSMAP北京公演の「賛同人」の名前だ。一部を抜粋しよう。

〔中国側〕▽唐家璇前国務委員▽程永華駐日大使▽武大偉・朝鮮半島問題特別代表▽王毅・国務院台湾事務弁公室主任▽崔天凱外務次官▽邵琪偉国家観光局長▽姚明(バスケットボール選手)

〔日本側〕▽海江田前経済産業相▽丹羽宇一郎駐中国大使▽御手洗冨士夫・前経団連会長▽長嶋茂雄元巨人監督・長嶋茂雄▽福原愛(卓球選手)

 政治化したSMAP公演の裏側には、ころころ変わる首相をあてにせず、直接「民」に働き掛けようと目論む中国共産党の対日戦略があるのだ。

◆本連載について
めまぐるしい変貌を遂げる中国。日々さまざまなニュースが飛び込んできますが、そのニュースをどう捉え、どう見ておくべきかを、新進気鋭のジャーナリスト や研究者がリアルタイムで提示します。政治・経済・軍事・社会問題・文化などあらゆる視点から、リレー形式で展開する中国時評です。
◆執筆者
富坂聰氏、石平氏、有本香氏(以上3名はジャーナリスト)
城山英巳氏(時事通信北京特派員)、平野聡氏(東京大学准教授)
※8月より、新たに以下の4名の執筆者に加わっていただきました。
森保裕氏(共同通信論説委員兼編集委員)、岡本隆司氏(京都府立大学准教授)
三宅康之氏(関西学院大学教授)、阿古智子氏(早稲田大学准教授)
◆更新 : 毎週月曜、水曜

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