2022年11月29日(火)

野嶋剛が読み解くアジア最新事情

2018年12月26日

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野嶋 剛 (のじま・つよし)

ジャーナリスト

1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に『イラク戦争従軍記』(朝日新聞社)、『ふたつの故宮博物院』(新潮選書)、『謎の名画・清明上河図』(勉誠出版)、『銀輪の巨人ジャイアント』(東洋経済新報社)、『ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち』(講談社)、『認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾』(明石書店)、『台湾とは何か』(ちくま新書)。訳書に『チャイニーズ・ライフ』(明石書店)。最新刊は『タイワニーズ 故郷喪失者の物語』(小学館)。公式HPは https://nojimatsuyoshi.com

日本の政治家の間で失望が広がったワケ

 日本にとって、台湾の輸入解禁がもたらす経済的メリットは大きくない。もし早い段階で諦めていたならば、日本側も別の発想ができただろう。しかし、台湾政府は過去の馬英九総統時代も含めて、公式・非公式に日本側へ解禁の考えを伝えていた。「ダメなものはダメ」と最初から日本に伝えておけば、反応もまた違ったはずだ。

 なんといっても自民党は伝統的に地方政治家の影響力が強い政党であり、東北・関東の政治家は、食品輸入の解禁に情熱を燃やしている。台湾がここまで待たせたうえに、住民投票までやって駄目押しするなら、それは友好的態度とは言えないという日本政府の反応は理解できる。

「忘れる」という選択肢しかない日本

 もちろん、話は最初に戻るのだが、これは日本側が迷惑をかけた立場から謙虚にお願いしていくべき話で、頭ごなしに台湾の態度を批判するのは好ましくない。日本政府や国会議員の間にも、台湾は親日的、民進党は日本に友好的という「想像」に甘えて、この問題に対する台湾社会の拒否反応の強さを正しく理解しなかった甘さがあり、その意味でボタンの掛け違いがあった。

 台湾は年間400万人以上の観光客を日本に送り込んでくれるインバウンドの支え手でもある。そして、東日本大震災で日本に対して他国を圧倒する200億円という民間支援を届け、日本人の心を励ましてくれた。民進党政権の誕生で、日台関係の発展が期待されていたが、この食品輸入問題が「喉に刺さったトゲ」として関係者を動けなくしているのは残念なことだ。

 住民投票の結果、台湾で何か新たな規制が発動されるわけではないが、当面は政府の行動をより強く縛ることになる。だから、これはもう当分「食品輸入問題は忘れる」という選択肢しかないだろう。いつか何年かして世の中の流れが変わったところでまた考えればいい。日台の政府間で大きな業績をあげることはしばらく難しいが、幸い日台関係の相互感情はいい。小さな成果を積み上げながら、民間を中心とする日台交流のさらなる発展につなげていくことは可能である。

特集:台湾統一地方選挙2018

  
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