2024年6月13日(木)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2011年9月14日

 前出の楊傑は宣威市中心部にマンションを持っており、週末や長期休暇はそこで過ごしている。マンションの価格は1平米1985元、広さは120平米というから約24万元だ。ローンはほとんど払い終わったという。楊傑は私と張さんをマンションに招待してくれた。モダンな雰囲気の内装で豪華な家具がいくつも置かれ、素敵なお宅だった。マンションから勤務する小学校まで、道が混んでいなくても車で片道2時間はかかる。彼は12万元で購入したマツダの車に乗り、市-県-鎮-村を頻繁に行ったり来たりしている。ガソリン代も馬鹿にならないだろう。

副業にも精を出す

 楊傑は代用教員を6年やった後、正規の教員になり、その後16年間校長をしている。代用教員の月給は当時38元、現在は4000元ほど、妻も同じ小学校の教員なので月に7000元ぐらいの収入があると思われる。しかし、長男は今年、河南省の鄭州大学に入学、次男は高校2年生と教育費の負担が重いことを考えれば、マンションや車を買う金を捻出するのは容易ではないはずだ。

 それでは、いったいどうやって金を調達しているのか。親は普通の農民、楊傑自身も農村の教員だ。教員は生徒の親から金品をもらうと聞くが、そのような習慣は楊傑いわく「県以上の学校ではあるが、鎮や村ではもらっても白菜やハムがいいところ」だ。「曲靖市内に持っていたマンションを売って5万元の利益を得た」とか、「ギャンブルで10万元負けた」とか話すところをみると、羽振りがよいのは間違いない。ただ教師をやっているだけでは、そのような金が出てくるわけがない。さまざまなチャンスにアンテナを張り巡らせ、副業にも精を出しているのだろう。

「農村から離れて解放されたい」

 張村を湖北の農村と比較してみると、明らかに異なる点がいくつもある。特に家族文化が残っているか、衰退しているかの違いである。もっともわかりやすい例を挙げると、張村の墓は立派で管理もしっかりなされている。彼らは先祖の魂を守るために土葬を固持しているが、湖北の農民たちは「上からの政策だ」と言われればすぐに火葬を取り入れた。

 同じ張姓の人間が集まって村に暮らしているため、土地に関するトラブルはほとんどない。出稼ぎに出ている人の土地は、必要な人が借りて耕している。出稼ぎに出ていて親の面倒をみないというような話は聞かなかった。小叔の一番上の兄の息子は、3人が交代で親の食事の世話をしていた。親の家や土地を行き継ぐ際には、兄弟がよく話し合って取り分を考えている。小叔の兄の息子は3人のうち次男が親の家を引き継いだが、次男は長男と三男に相応の金を払っている。

 水利に関するもめごとも聞いたことがないという。水道は近隣の何軒かで金を出し合って引いている。旱魃で出なくなることもあるが、その場合は水が出る家までもらいに行く。生活水に困るほどの水不足に陥ったことはないから、水道の貸し借りでいさかいが起きることはなく、農業用水に関しても灌漑がなされていない土地が多いため、それほど問題にはならないという。

⇒次ページ 中国の農村衰退で、世界の食糧価格が高騰する


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