中国政府の新再エネ推進政策
中国政府が出力制御を行いながら、一方で再エネ導入を積極的に進めている理由の一つは、大気汚染対策として都市近郊を中心に石炭火力発電所の閉鎖を進めているため、電力需要量が伸びる中で減少する石炭火力の発電分を再エネからの発電量で補うことにある。
国家発展改革委員会は、今年1月9日、中央政府から補助金などの支援を受けなくても石炭火力並みの発電コストになる風力、太陽光発電設備を設置するプロジェクトを推進することを発表した。対象プロジェクトからの発電量については、送電管理者が長期契約の固定価格で買い取ることも可能とされている。将来の収益見通しを確実にし投資を促す意図だ。
1月10日には、国家能源局が発表を行い、発電された全電力を地域内で消費可能、即ち出力制御の対象とならない地域がプロジェクトの対象となること、さらに地方政府が限定された期間補助を行うことは可能であること、金融機関は建設を積極的に支援することが望ましいと追加の説明を行った。その他の再エネ事業については補助金額を削減するため入札制度が望ましいとされているが、詳細については明らかではない。
再エネ技術でも覇権を握る中国
中国が世界一のシェアを持つのは、再エネによる発電だけではない。バッテリー稼働とプラグイン・ハイブリッドの電気自動車(EV)のシェアでも他国を圧倒している。大気汚染対策もありEV導入を推進している結果だ。2018年EVの世界販売台数は210万台に達し、そのうち中国が50%以上、110万台を占め、2位米国の35万台を大きく引き離しているとみられている。
EV製造でも世界一の中国は、EVに使用されている部品製造でもスケールメリットを活かし優位に立っている。バッテリーでは、パナソニック製を使用しているテスラを除けば、中国製が大半を占め、EV製造国に関係なくバッテリーは中国製と言われるほどだ。市場を育てた国は優位に立つことができる。
大きな再エネ市場を持つ中国は、再エネ技術でも世界の覇権を握り始めた。既に全特許出願件数で世界一になっている中国だが、再エネ関連特許出願数でも世界一だ。2007年日本は再エネ関連特許出願数世界一だったが、2009年中国に、翌年米国に抜かれ世界3位に転落した。今、中国は日本の2倍以上の出願件数を持つようになった(図-3)。
大きな市場と再エネ関連製造業、技術を持つ中国は他国の再エネビジネスにも進出している。中国国家電網がブラジルの送配電会社を傘下にするなど、中国企業は南米で影響力を拡大し中南米諸国で多くの再エネビジネスに取り組んでいると報道されている。ポルトガルなどの送電網も国家電網の影響下にあり、欧州市場でも中国による再エネビジネスが展開される可能性も高い。
中国が大きな再エネ市場を作り技術的優位に立つなか、世界のエネルギー関連地政学にも影響を与えるとの見方も出てきた。