2022年12月10日(土)

Wedge REPORT

2019年1月29日

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大内伸哉 (おおうち・しんや)

神戸大学大学院法学研究科教授

1963年神戸市生まれ。東京大学法学部卒業、同博士課程修了。神戸大学法学部助教を経て、2001年より現職。著書に『AI時代の働き方と法』(弘文堂)など。
 

真のパワハラ対策は
フラット化とデジタル化

 パワハラは、企業の垂直型組織の生み出した弊害ともいえる。第一次産業革命後、機械制大工業の時代となり、工場内では多数の労働者が協働する状況が生じた。効率的な協働態勢を実現するためには、階層的な構造を設け、上から下への指揮命令が末端にまで浸透する垂直型組織が必要だった。

 しかし、第四次産業革命の時代の生産システムはこれとは異なるものとなる。人間のこれまでの経験や知識はデジタル化され、AI(人工知能)やロボットを活用できる範囲が飛躍的に広がる。企業は機械と人間の分業を再定義して省人化を進め、人間には機械では対応できない知的創造的な業務を割り当てるようになる。こうした業務に従事するのは、プロフェッショナルな能力をもつ人材だ。

 こうした人材は、上司が指揮命令をして働かせるには適しない。何をするかの指示は必要だが、それをどのように遂行するかについては、部下のほうが詳しいことが多いからだ。上司の任務として重要なのは、業務のコーディネータとして、いかにして部下の能力を引き出すかだ。そこではもはや、上司と部下という関係は存在していない。実際にも、上司がいない水平型組織(ホラクラシー)を取り入れている企業が増えつつある。さらにネット上で仕事を完結する働き方(テレワークなど)が広がると、パワハラの発生舞台となる職場そのものが大きく変わることになる。

 パワハラとは、デジタル化の流れに乗り遅れ、旧態依然としたアナログ的な組織が残っている企業で起こる問題なのだ。そうだとすると、最も効果的なパワハラ対策は、デジタル経済に適合した企業経営を普及させ、パワハラの土壌を取り除くことなのかもしれない。

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■クラッシャー上司が企業を蝕む
PART 1     上司と部下の間にある断絶の正体 パワハラ一掃で会社は変わる
PART 2         企業の体たらくが生んだ「パワハラ法」 小手先の対応で終わらせるな
PART 3         成果上がらぬメンタルヘルス対策 安易な「ストレス低減」から脱却を
COLUMN       企業ニーズに応えきれない産業医 法改正で問われる「質」の向上
INTERVIEW  中途半端な復職は症状を悪化させる 目指すべきゴールは「再休職防止」

  
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◆Wedge2019年2月号より

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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