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2019年2月1日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

過去半世紀、米国が経験した変化

 基盤の強さの秘訣は、世論調査をみるかぎり好調な経済につきるだろう。中国に対する強硬姿勢も有権者の心をつかんでいるのかもしれない。

 ただ、人種差別、性差別ともいえる数々の暴言、強引な政策遂行、側近の相次ぐ辞職にもかかわらず一定の支持基盤を固めているというのは単なる政策的なことにとどまるとはどうしても思えない。

 米国人が過去半世紀に経験した劇的かつ衝撃的な変化、人口に占める白人の比率の低下、米国以外で生まれた国民の増加、両親と同居する若年世代の増加、未婚女性の出産率の上昇、南北戦争以来もっとも激しい国内の分裂―といったことが背景にあるのかもしれない。

 トランプ氏の政治手法についてはすでにさまざまな分析、研究がなされているが、政治、経済学にとどまらず、社会学的な手法も加味した十分な研究の成果を待つ必要があろう。

すでに選挙人過半数近く獲得?

 関心を惹かれるのは、こうした状況の中、弾劾の動きにもかかわらず、大統領が次の選挙の地歩をかためつつあることだ。

 共和党全国委員会はさきにニューメキシコ州で開いた冬期定期会合で2020年の次期大統領選でトランプ氏を支持する方針を決めた。再選を目指す現職とはいえ、時に予備選で対立候補の挑戦を受けることを考えれば早々と現職支持を打ち出すのはきわめて異例というべきだろう。トランプ氏にとってはこの上もない援軍になろう

 米国の選挙専門家の中にも、前回の大統領選、昨年の中間選挙の結果の分析などから、トランプ大統領はジョージア、ノースカロライナ、テネシーなどの州で勝利が濃厚で、すでに総選挙人538人の過半数270人にあと100超にまで迫っていると分析する向きもある。

 〝ロシア・ゲート〟を捜査しているミュラー特別検察官の捜査報告が近く出されると言われる。ウィテカー司法長官代行は28日の記者会見で「近く完結する。報告を心待ちにしている」と述べた。

 さまざまな報道がなされ、大統領の側近が訴追されるなどしているが、焦点はロシアの〝選挙干渉〟にトランプ大統領が関与したことを示す物的証拠があるのかどうかだ。不倫・偽証疑惑で弾劾訴追されたクリントン大統領の場合は、不倫相手の告白テープという物証があったが、トランプ疑惑の場合、検察官がどこま証拠を入手しているか。

 大統領弾劾訴追は下院が過半数の賛成で発議し、上院議員100人のうち3分の2が賛成すれば成立。大統領は職を追われるが、上院で共和党が多数を占めている現状では、弾劾など人々の口の端には上っても実現は難しいと言わざるを得ない。

 来年秋の選挙でトランプ大統領の笑顔をふたたび見る可能性は決して低いことではない。
くりかえすが、驚くべき政治力というほかはない。 

  
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