2024年4月20日(土)

Washington Files

2019年2月25日

4. 世論の支持を得ているのか?

 22日、MSNBCテレビが報じた世論調査結果によると、トランプ大統領による「国家非常事態宣言」について「支持」を表明したのは36%だったのに対し、「支持しない」と答えた人は61%にも達した。また、メキシコ国境の壁建設についての質問に対しても「支持」31%、「支持しない」61%と、まったく同じ結果だった。

 さらに公共ラジオ放送「NPR」、公共テレビ放送「PBS」がマリスト・カレッジに共同で依頼して実施した調査でも不支持61%、支持36%と、こちらもまったく同じ結果となった。

 過去歴代大統領の宣告した国家非常事態の場合、ほとんどが過半数支持を得てきたこととは対照的に、今回は圧倒的多数の国民がトランプ大統領の取った措置を否定的にとらえていることが明白となっている。

 こうした点を踏まえ、米議会でも民主党を中心に上下両院で大統領宣言を否認する動きが急速に高まっている。

 まず、ペロシ下院議長は20日、与野党下院議員全員(435人)宛てに書簡を送り、この中で「憲法手続きに基づいた議会審議で承認を得られなかった壁建設予算を大統領の独断でねん出しようとする行為は、明らかに憲法違反であり、非常事態宣言はただちに終結させるべきである」として、近く上程予定の「非常事態終結決議案」を採択するよう呼びかけた。同決議案は早ければ今月中にも圧倒的多数で可決される見込みだ。

 上院でも、壁予算を否認した「議会の意思」を無視する今回の大統領宣言について、憲法で確立された「三権分立」を蹂躙するものとして、民主党のみならず、共和党議員の間でも反発する空気が強い。これを受けて、チャールズ・シューマー民主党上院院内総務は21日の記者会見で「大統領の非常事態宣言は権力濫用、越権行為であり、断じて認められない。近く、下院の動きと合わせ、これを阻止するための決議案を提出する予定だ」と明言した。

 ただ、上院は共和党が多数を占めており、実際に可決されるかどうかは微妙であるほか、もし、可決された場合でも、トランプ大統領はすでに拒否権行使を断言しているため、当面、国家非常事態停止の見込みは立っていない。

 とはいえ、大統領の今回のような独断的な措置によって、トランプ政権全体に対する国民の信頼が一層揺らいだことは間違いなく、米マスコミの多くも「2020年大統領選での再選の道から自らを遠のけた愚挙」との論評を伝えている。

  
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