WEDGE REPORT

2019年3月31日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

シンガポール会談で、日本はなぜ方針転換したのか

 あくまでも想像だが、ロシア側から事前に「2島なら解決」という何らかの感触を得ていたのではなかろうか。首相が自信たっぷりのコメントをしたのは、そのためだったのかもしれない。

 年明けの一連の首脳、外相会談でそれぞれ、どんなやりとりがあったのか明らかではないが、浮かれていた日本側を失望させ、再びきびしい認識に戻らざるを得ない何らかのやりとりがあったのだろう。

領土は返さないが経済協力は欲しい

 誠実さをかけらも示さず、ロシアは今後も北方領土で経済開発、軍事基地建設など〝ロシア化〟を進め、日本にも協力を求めてくるだろう。

 3月2日づけの産経新聞がロシアの「イズベスチヤ」紙を引用して報じたところによると、ロシアは北方領土と千島列島を対象とした経済特区の拡大、大規模投資などを検討しているという。2月20日づけの日本経済新聞は、ロシアの民間ガス大手が日本企業に対して、北極圏での液化天然ガス事業への出資を要請していると報じた。プーチン大統領も1月の首脳会談で首相に対して、日本企業の早期決断への期待感を伝えたという。この会談で日本側は、貿易額を数年間で1.5倍の300億ドルに拡大することを約束させられている。

 2月20日付けの読売新聞によると、ロシア政府系世論調査機関が北方領土の住民に聞き取りを行ったところ、96%の住民が、島の日本への引き渡しに反対したという。この結果を受けてサハリン州の知事代行は日本との領土交渉を打ち切るよう求め、国営テレビはこの結果を繰り返し報じたという。政府系機関の聞き取り調査に対して、4%の人が少なくとも反対しなかったことは、むしろ驚くべき事ではないかと思えるが、それはともかくとして、ロシアが返還反対の世論情勢工作を盛んに行っていることを示している。

 領土は絶対に返さないけど、経済協力はほしいというロシアの思惑をはっきりと示している。

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