大事なのは媽祖を慕う気持ち
巡礼の途中、各地の寺廟では巡礼者のための食事が用意されるほか、沿道では村人が果物や飲み物を配っています。また、宿泊に関しては寺廟内に段ボールを敷き、その上で見知らぬ人々と「雑魚寝」するのが一般的ですが、寝袋を持参している人も少なくありません。時には好意で部屋やシャワーを貸してくれる人もいます。つまり、媽祖に想いを寄せる者同士、助け合いながら巡礼を続けていくのです。
なお、巡礼は全行程を参加しなければならないという決まりはありません。一日でも、場合によっては数時間参加するだけでも、媽祖を慕う気持ちさえあれば問題ありません。実際に、信者の中には自転車やバイクで参加している人もいますし、なかばハイキング気分で巡礼に参加する親子連れも見かけます。
2019年の「大甲媽祖巡礼」は4月7日夜10時からスタートします。詳細は大甲鎮瀾宮のオフィシャルサイトで確認しましょう。ちなみに、大甲よりも伝統的なスタイルにこだわる「白沙屯媽祖」も今年は同日に始まります。苗栗(びょうりつ)県の白沙屯(はくさとん)拱天宮から雲林県の北港(ほっこう)朝天宮までを練り歩きますが、こちらはなんと、ルートが決まっていません。媽祖の神意を尋ねながらその場その場で進路を決め、歩いていくのです。
ちなみに、「大甲」でも「白沙屯」でも、巡礼中の媽祖の所在地を示したアプリが開発されています。伝統的な祭典にこうしたハイテク技術を取り入れているのも台湾らしいと言えるでしょう。つまり、携帯電話で媽祖の居場所を確認しながら、ピンポイントで巡礼に参加することが可能です。
台湾の人たちの溢れんばかりの人情を濃厚に体験できる「媽祖巡礼」。この時期に台湾を訪れることがありましたら、ぜひ一度体験してみてはいかがでしょうか。
(文中写真はすべて片倉佳史による撮影)
http://www.dajiamazu.org.tw/Active2016/(中国語)
白沙屯媽祖巡礼オフィシャルサイト
https://www.baishatun.com.tw/ (中国語・日本語)
大甲媽祖のスケジュール表
http://www.dajiamazu.org.tw/Active2016/content/schedule/schedule01.aspx
大甲媽祖の所在地を示すアプリ
http://mazu.skyeyes.tw/MazuTrack.aspx
白沙屯媽祖の所在地を示すアプリ
http://www.baishatun.org.tw/
台湾在住ライター。1999年から台湾に暮らし、台湾に関するガイドブックや書籍の執筆、製作に携わる。そのほか、機内誌への寄稿や女性誌のコーディネートなども手がけている。2011年に台湾で出版した中国語書籍『在台灣,遇見一百分的感動~片倉真理 旅的手記』(夏日出版社)のほか、共著に『食べる指さし会話帳・台湾』(情報センター出版局)、『台湾で日帰り旅 鉄道に乗って人気の街へ』(JTBパブリッシング)など。2018年4月に初の単著『台湾探見 Discover Taiwan-ちょっぴりディープに台湾体験』(ウェッジ)を刊行。『CREA Web』(文藝春秋)や『&Premium』 (マガジンハウス)でも連載中。