2024年11月21日(木)

Wedge REPORT

2019年6月16日

「たまたま」から「ゴーヤー」、「きゅうり」に

 そして、「たまたま」に嫉妬したゴーヤーの生産者の組合が、ゴーヤーもパーティーをしてほしいと言って、ゴーヤーパーティー、フルコースでゴーヤーのパーティーを開催したり。今度は宮崎というと、日本一はキュウリで、実は一番宮崎でもうかる農業は、マンゴーではなくキュウリなんです。キュウリ農家さんたちが、俺たちが1位だ、キュウリもやってくれ、ということで、キュウリのキュリパというのを開催し、NHKさんにも特集をしていただき、キュウリで盛り上がれる県民ということで、大いに笑っていただいたりしたところです。

 今、数々のかぶり物ができて、かぶり物保管の場所が大変になっております(笑)。借りたい方がいらっしゃいましたら、東京でも宮崎の東京事務所にございますので、ぜひ皆さんでかぶっていただきたいなと思っております。

 こういったのは、皆さん、お客様の、消費者のブランド価値を上げていくSNS発信を使ってエバンジェリスト――伝道師の方たちを育てていこう、その方たちをロイヤルカスタマーにしていって、ファンを広げていこうというような戦略に基づいてやってきたところです。

 ただ、これだけでは「またパーティー」というふうになってしまうということで、もっと宮崎県全体のブランド価値を上げていきたいという思いがありまして、総合化を図っていこうとしています。

 宮崎県のレーベルで、こちらは「カラダグッドミヤザキ」というのを今一番推進していっています。元々この下にある赤いマークの「情熱!みやざき」、ぶわーっと燃えている、このロゴは20年以上レーベルを使ってきたんですが、最近では、このレーベルだと黄色い法被に赤い情熱マーク、横断幕みたいな売り場は、おしゃれなスーパーに持ち込むと、「結構です。そういったのは持ってこないでください」と言われるようになってしまったんです。

 なので、もっとファッションブランドもコラボしてくれるような、「情熱!みやざき」はそのままありつつ、新しいレーベルとして、「カラダグッドミヤザキ」というのをつくって発信をしているところです。

 また、今までだったらスーパーや百貨店としかコラボレーションしていなかったんですが、この「カラダグッド」をするようになり、ヨガスクールやネイルサロン、美容室、それから今年はお医者様たちとも一緒にやっていこうということで、今までと違ったコラボレーションで宮崎県のフルーツや野菜、お肉などをアピールしていこうということでやっていっているところです。

「ノンジョルノ宮崎」

 このほかにも実は私が力を入れているのは、本格焼酎の国内外のブランディングです。日本酒に比べて焼酎のブランディングがなかなか難しいといわれる中、何とかこの焼酎も、先ほどの「カラダグッド」の要素をたくさん備えていますし、私どもも、一番の蔵元を誇る鹿児島が100だとすると、宮崎は37蔵で少ないんですけれども、焼酎の出荷量としては日本一を3年前から誇っていて、ここから日本一を世界一に広げていこうということで始まったのが、この「ノンジョルノ宮崎」というイベントです。

 芋焼酎が一番多いので、芋をメインとして麦、米、ソバと、すべての素材が入っているロゴを私のほうでデザインさせていただいて、東京・宮崎で約500名で年1回開催しています。そのほかにもパリ・ミラノでも開催をしていて、世界中でこの焼酎の文化を伝えていきたいなというふうに思っているところです。

 ちょうどミラノ万博に出たことをきっかけに、イタリアのほうにも今輸出が始まっていて、私のほうで輸出をさせていただいています。プロ向けの試飲会やカスタマー向けのイベントなどを毎年、年に2回ほど行っています。ただただ押し付けではなくて、その国に合わせた切り口というのを探すということもひとつ私の目的でもあります。

 また、お互いを深く理解し合うということで、イタリアのスタッフにも研修に宮崎に来ていただいたり、イタリアで導入している飲食店さんにメニューの提案、飲み方やネーミングをこちらのほうからアドバイスを入れさせていただいたりということでやっております。

 数々の展示会に出たりもするんですが、まずはこの「ノンジョルノ宮崎」というのを楽しさから興味を持ってもらうという切り口でやっているんです。「何で『ノンジョルノ』なの?」と言われたんですけれども、実は私、宮崎や国内のほかの県のお仕事もさせていただいているんですが、イタリアのピエモンテ州とかトスカーナ州の6次化とかインバウンドのお仕事もさせていただいているところから、よくイタリアと宮崎を行き来していると、時々向こうの挨拶言葉の「ボンジョルノ」が「ノンジョルノ」に聞こえるんですね(笑)。

 宮崎人の挨拶は、「最近、飲んじょる?」というのが挨拶なんです。「最近飲んでるか」ということなんです。そこから挨拶があるので、「ボンジョルノ」が「ノンジョルノ」に聞こえるようになり、これっていいかも、ということから蔵元たちに相談したところ、「面白いね」ということで、この「ノンジョルノ宮崎」というネーミングで今やろうとしているところです。

 実はこの動きは、私はヨーロッパの担当ですが、ニューヨークやロスでも広がっていて、宮崎県のグローバル戦略に乗って、世界中で開催される日を夢見ているところです。宮崎の焼酎という文化が、とか、生産地はこんなところで、とか、こんなに糖質ゼロでヘルシーなんだよ、というところからうたってもなかなか人に浸透しなかった。

 それは先ほどの「たまたま」にしてもマンゴーにしてもそうで、ここからいくのも一つなんですが、なかなか焼酎というのが浸透しなかった中で、まずは楽しかった、その楽しかったことから、これってどんな飲み物なんだろうとか、どんな産地なんだろうとか、どんな栄養素なんだろうと、それぞれの蔵のストーリーって、どんな人たちなんだろうというようなことに後から転換していくというやり方でやっていった事例の一つです。

 今は宮崎4蔵からスタートして、沖縄、熊本、鹿児島と広がっていって、今月も船が出るところです。地域ではなくて、同じベクトルを持った小さな生産者でタッグを組んで、最初のスタートは宮崎だったんだけれども、これからどんどん全国の生産者さんたちがタッグを組んでヨーロッパに文化を伝えていきたいですし、また先ほどちょっと話も出ていたんですけれども、ローカル・トゥ・ローカルということももっとやっていきたいなと思っています。

 宮崎のローカルとローカル、鹿児島と宮崎、近いですけれども、違う文化を持っているところで情報の交換。それから、遠いけれどもローカル・グローバル。宮崎とイタリアの田舎のほう、似ているものを持っているところでマリアージュできないか。そこでいろいろな食文化や芸能の文化。宮崎は神話の里でもあるので、神話を切り口に今度はヨーロッパの国々とつながっていけたり、そういうことができるんじゃないかなと思いながら、いろいろな可能性を考えて、多岐にわたった活動をさせていただいているところです。

水代 宮田さんのお話を聞くと、皆さんを「自分事」にさせるのがすごくお上手だなというふうに思って、まずはSNSとかソーシャルの運用はすごく大事なんだなということをすごく感じました。ブランディングって、「自分事」の人を増やすというところも、こうなると皆さんどういうふうにしているのかなとお話ししたいところなんですけれども、やっぱりブランディングって、結局一言で僕が言うとなると、誰に言ってもらうかを一生懸命考えることなのかなというふうに思っているんですよね。

水代氏(右。写真、生津勝隆)

 例えば僕は東京の町づくりも、東京駅の前の丸の内の町づくりを20年ぐらいやらせていただいているんですけれども、では誰が一番面白いって、例えばですけれども、オバマ前大統領が、東京に最高の町がある、とどこでも言ってくれていたりとかしたら、絶対その町の価値ってすごく上がると思います。

 誰に言ってもらうかという手法って、ブランド構築で、日本って結構実は先進国というか面白くて、僕はパリでよく仕事をするので、フランス人が来たときに一番日本に来て衝撃的だったのは、ジャン・レノが広告に出ている、しかもドラえもんの格好をしている、と。これはあり得ない。トミー・リー・ジョーンズが警備員をしているのとかあり得ない、と。

 これって向こうだとあり得ないけど、逆に今パリとかで、映画のスターとかドラマに出ている人に商品を言ってもらうということが実はすごくはやってきたりしています。日本って実は、誰に言ってもらうかというところで、芸能人がおいしそうにビールをゴクッと飲むとかという文化って、実は先進国になっていたりとかして、誰に言ってもらうかというのは割と上手な人たちだという気がしてきていて、そういうことを常に考えていかなければなというふうに思ったんです。

 言ってもらうときに自分のこととして言ってもらえるから、情報ってやっぱり広がっていくんだと思うんですけど、そこってやっぱり人と人の話なので、熱意だったり、技であったり、コミュニケーションの手法だったり、いろいろあると思うんです。一人でも多くの人に自分事で言ってもらうためにどういうことをやられているのかとか、それが多分ブランドに直につながってくると思うんですが、どうですか、宮田さん。

宮田 そうですね。まずは興味を持ってもらうためにこういったパーティーみたいなことをやると、人対人って、いくらソーシャルでいろいろ見ていたとしても、会ってのイメージってすごく強くなるじゃないですか。お会いしてから、この人ってどんな人なんだろうとか、「たまたま」ってどんなフルーツなんだろうというふうに興味を後から探すことは幾らでも今はできるので、最初の会うということをすごく大事にしたいなというふうに思います。

 焼酎もしかりで、焼酎なんてどれも一緒と思っていた女の子が、一人の蔵元が話してその情熱を聞いたときに、この人のつくりを知りたい、その人のつくりから焼酎のつくり方を学んだとか、ファンになったとかということがあるので、まずは私はそういう、ちょっと古くさいかもしれないんですけど、人対人がありつつ、後でつながっていくのがソーシャルかなと。

一度つながると、その方と一緒に共有できる。でも最初の興味がなければ、これだけの情報があるので、どれをキャッチしていいか皆さん悩んでいる。なので、やっぱりリアルを大事にしたいです。

 イタリアでもそうなんです。一回イベントをやった後に、言葉は通じなくても、動画とか映像とかを上げていくと、やっぱり目にしていると愛着がどんどん湧いてきて、「自分が広めなきゃ」みたいな気持ちでイタリアのカスタマーの方たちが営業して回ってくださったり、そのことで星付きのレストランに入ったりということもたくさんあるんですね。それがすごく大事かなと思っています。

水代 ありがとうございます。ブランドとか、特にもっと変わっているのが、デザインというのがすごく変わっているなと僕は思っていて、カンヌ広告賞のライオンを受賞したり、グッドデザイン賞を取ったりしたときも感じたんですけど、グッドデザインが地域の方に誇りを取り戻させたという。

 目の前の海と島と山で、電気を使わないジムを僕は昔つくったんです。それと経済的に地元で回るビジネスモデルをつくった。そこがデザインだよ、みたいなことで。デザインとブランディングに近いと思うんですけど、グラフィックとか形状とか、そういうものではなくて、デザインというもの自体がそっちに今来ているなというのをすごく。社会問題の解決とかがやっぱり一番かっこいいデザインだと思うし、目の前の海と山をみんな地元の人がすごいと思わせたという気付きのデザインだということで。

 あとは、自分がすごく楽しいと思っていることとか、いいと思っていることを、一人ずつファンを増やしていくことというのが、遠そうに見えて一番近い道だということだと思います。

  
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