京都大学が、米国東海岸アイビーリーグの一つ、名門コーネル大学と提携した。今年4月から最初の学生が就学している。ニューヨーク州にあるコーネル大学ビジネススクールの「ホテルスクール」(修士)は世界的に有名で、星野リゾート社長の星野佳路さんも出身者のひとりだ。
具体的には、2年間で京都大学とコーネル大学で2学期づつ学ぶ修士課程で、京大ではMBA(経営学修士)、コーネル大でMMH(Master of Management in Hospitality=ホスピタリティ学修士)を取得するダブルディグリーコースとなっている。
入学するには、TOEFLとGMATのスコアを提出したうえで、必要書類を出願する。来年度は定員20人までを予定している。6月20日(木)18時から、東京・新丸ビル10階の京都大学東京オフィスで、また、6月27日(木)18時から、大阪・梅田のハービスPLAZAで、各々、入試説明会が開催される。
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京都大学経営管理大学院の原良憲院長は、
「今回の取り組みの背景には、デジタル社会の深化ということが背景にあります。AIが発達するなかで、自動運転、ビッグデータの活用など、ビジネスの世界では大きな変革期に直面しています。デジタル化が進むからこそ、デジタルには真似のできない“人間力”こそが大事になってきます。コーネル大学との連携によって、ホスピタリティ能力、まさに高い人間力を持ったリーダーを育成することが狙いです」
日本経済をけん引してきたのは製造業だが、すでにGDPの割合では4分の3がサービス業となっている。
「新しいソリューションビジネスを創造するためにも、社会人経験のある30代のビジネスパーソンにチャレンジしてほしい」と、原院長は話す。
さらに、学費にもメリットがあるという。普通にコーネル大学の大学院に通うことになれば、3期分の授業料を支払うことになるが、今回の提携コースでは、京大に2期分の約60万円、コーネル大に同約600万円を納めればよい。京大を挟むことによって、学費を低く抑えることが可能で、京都にいる間は、仕事と掛け持ちをしながら単位を獲得することもできる。
民間企業の研究者としてシリコンバレーで10年間過ごしてきた原院長は、
「いま、ESG投資(環境・社会・ガバナンスの非財務情報を考慮した投資)、SDGs(持続可能な開発目標)といった価値観が、欧米由来で、流行りつつあります。しかし、それは日本企業にとっては、これまでも取り組んできた当たり前のことです。しかも、京都には老舗企業も多数存在し、社会起業家も集まってきています。我々はこのような京都の地の利を生かし、『無形資産』に焦点を当てていくことで、新しい価値を生むことができると思います」と話す。
ベストセラー『ホモ・デウス』の著者で歴史学者のユヴァル・ノア・ハラリは、コンピューターアルゴリズムが進化することで少数の特権エリートである超人とコンピューターアルゴリズムによって大多数の人が支配される「劣等カースト」になるといった未来が到来することを示唆している。
本当にそのような未来が来るかどうかは誰にも分らないが、今後さらにテクノロジーが発達することで、少なからず人間がしていた仕事にとって代わることは間違いないだろう。そのとき、機械には真似のできない「ホスピタリティ」の能力を高めておくことは、来る時代に向けて大きな武器になるはずだ。
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