イラン、北朝鮮、日本よりもヒラリー
トランプ大統領はイランに関して「米国はとんでもないイラン核合意から離脱した。世界一のテロ支援国家であるイランに最も厳しい制裁を課した」と主張しました。イランについての言及はこれのみです。
これまでの支持者集会でトランプ大統領は、「米国は世界一の産油国になった」と訴えてきました。その効果があってか、うえで紹介したケンさんはホルムズ海峡近くのオマーン湾で起きた石油タンカー2隻攻撃の事件は、トランプ大統領と同様、「イランがやった」と述べていましたが、危機的意識はまったくありませんでした。
約1時間20分の演説の中でトランプ大統領は、北朝鮮の核・ミサイル問題について触れませんでした。北朝鮮は核実験及び長距離弾道ミサイル発射を停止しているので、「現状維持でよし」とみているフシがあります。
日本についてもまったく言及しませんでした。ただ、今回もそうですが、他の演説でもトランプ大統領は「私たちは勝って、勝って、勝ち続ける」と述べて、「ウイン(勝つ)」という言葉を繰り返し使用している点は注目です。
というのは、安倍晋三総理は貿易摩擦に関して「日米がウイン・ウイン(勝者・勝者)となる形の早期の成果達成」と説明しているからです。残念ながら、トランプ大統領には「ウイン・ウイン」の発想はなく、「ウイン・ルーズ(勝者・敗者)」のパラダイム(ものの見方)しか存在していないようです。
さて、トランプ大統領がイラン、北朝鮮及び日本よりも演説の中で時間を費やしたのは、ヒラリー・クリントン元国務長官への攻撃でした。クリントン氏は20年米大統領選挙に出馬していません。
にもかかわらず、なぜトランプ大統領はクリントン氏が私的なサーバーを使用して公務を行い、3万3000通のメールを削除したといわれる「メール問題」を取りあげたのでしょうか。
一言で言えば、クリントン氏はメキシコから流入する不法移民と同様、トランプ支持者のやる気を高めるモチベーター(動機づけ要因)になっているからです。これも再選戦略といえるでしょう。
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