From NY

2019年7月4日

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田村明子 (たむら・あきこ)

ジャーナリスト

盛岡市生まれ。1977年米国に単身留学し、1980年から現在までニューヨーク在住。著書に『ニューヨーカーに学ぶ軽く見られない英語』(朝日新書)、『知的な英語、好かれる英語』(生活人新書)、『女を上げる英会話』(青春出版社)、『聞き上手の英会話』(KADOKAWA/中経出版)など。翻訳書も多数。フィギュアスケートライターとしても知られており、『挑戦者たち-男子フィギュアスケート平昌五輪を超えて』(新潮社)で2018年ミズノスポーツライター賞受賞。

「楽しむ」ものから市民運動的な意味合いが強くなったパレード

市民運動色が強くなったパレード

 マンハッタンの五番街と23丁目にあるマディソンスクエア(かつてのマディソンスクエアガーデンがあった場所だが、今は市民の憩いの公園となっている)からスタートし、五番街を下ってグリニッジビレッジを横断し、クリストファーストリート周辺から今度は七番街を上る。U字型に行進したパレードを取材して感じたのはかつての「ゲイパレード」からの変貌である。

 数年ほど前までは、このプライドマーチは今よりさらに派手だった。リオのカーニバルを思わせるような華やかな衣装に身を包んだドラァグクイーンたちを中心となって、人を楽しませることが大好きな彼らが、「難しいことはいいから楽しもう」というビジュアルな演出を徹底的に追求したお祭りであった。

 だが現在のプライドマーチは、もっと市民運動色が濃くなった。多くの企業スポンサーがつき、各種公的団体や企業が「全ての人々の平等の権利」を支持していることをアピールする場所になっている。

見物客はなんと400万人

 実際のところ、現在のプライドマーチは、本来の「ストーンウォール」精神を受け継いでいないと主張するLGBTQ団体もいて、彼らは企業のスポンサーシップを拒否して自分たち独自のパレードを行っている。

 サンフランシスコでは、フェイスブックやグーグルなどの企業スポンサーの参加に反発したグループが、パレードの交差点をブロックするという一幕もあったという。

 こうした批判もある中で、今日のプライドマーチの見学に集まった群衆はおよそ400万人と報道された。もちろん世界各国からやってきた観光客も少なくないだろうが、この数はニューヨーク市全体の人口の半分にあたる。

 見物客の多くはやはり虹色のスカーフなどを身につけていたものの、その全員がゲイやレズビアンというわけではない。だがプライドマーチを通じて、市民運動の支持を表明するサポーターたちだ。

見物人たちの中にも虹色のものを身に着けた人々が

 これほどパレードが盛り上がった理由の一つは、もちろんトランプ政権下のアメリカ政府に対する積み重なる危機感だ。

人々がプライドマーチを支持する背景は

 トランプ政権になってから、HIVとエイズ治癒のための医療援助予算が大幅に削減されただけでなく、日本の国民年金にあたるソーシャルセキュリティ、老人、低所得者向けの医療保険補助予算などが、大きく削られようとしている。一部の裕福層だけが優遇され、社会の弱者、マイノリティたちが切り捨てられる今のアメリカ政府の方向性に、多くのニューヨーク市民が深刻な危機感を持っているのだ。

 1969年にはアメリカ合衆国の49州で同性間のセックスが法律で禁じられていた。オバマ政権下の合衆国最高裁が同性婚を合法化したのは、2015年のことだ。だがこの法律も、将来また覆される可能性もある。

 折しも2020年に向けて、大統領候補者指名を目指す民主党の立候補者たちのテレビ討論会がスタートしたところで、国民の目は次の大統領選に向いている。トランプ氏が再選するような事態となれば、この先も保守派もますます勢いをつけていくことになることは必須だろう。

 マンハッタンを覆っていた虹色の旗には、LGBTQコミュニティだけではなく、全ての人々が自分らしく生きていけるリベラルな社会を望む人々の願いが込められているのである。

  
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